なぜ児童相談所は動けないのか

2018年3月、東京都目黒区で船戸結愛ちゃん(5歳)の虐待死事件が起きた。「もうおねがい ゆるして ゆるしてください」。結愛ちゃんが書いた反省文を読むたびに、何かしてあげられなかったのかとやるせない気持ちになる。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/evgenyatamanenko)

私の探偵社では、児童虐待が確認された場合は、無償枠で対応をしている。依頼者の多くは、離婚で親権を失った実父や、実父側の祖父母だ。実父が会ったときに子供の体の不自然な痣に気づく、それを子や同居する母親に問い質した途端、子供と会えなくなるというパターンが多い。親権を持たない親が子と会う権利は、親権を持つ親に簡単に切られてしまう。転居すれば、居場所もわからなくなる。

そこで我々が依頼を受けて調査するのだが、虐待の事実をつかんでも、そこから先が難しい。証拠を揃えて児童相談所(以下「児相」)に通報しても、動いてくれることは稀だからだ。

児相はなぜ動けないのか。最大の原因は、親権の強さだ。児相の職員が通報を受けて現場に駆けつけても、親権を持つ親から逆に、「転んで怪我しただけだ」「どこに証拠がある」と責め立てられる。

もちろん児相には、立ち入り調査したり、子供を一時保護したりする権限がある。しかし、親権者から「子を親から引き離すのか」と抵抗されると、手を出しにくい。

日本独自の“制度”が、虐待をつくっている

こうした状況を変えるには、児相の職員を増員する対策も必要だろう。しかし、高度なスキルが必要な職務であり、即効性は期待できない。