政治に対する主義主張をほとんどしない日経新聞。かたや、たしかに高級紙であるが英国の左派系メディアであるフィナンシャル・タイムズ(FT)。日経がFTを買収してから約3年。はたしてうまく2紙は融合しているのか。米国政治に詳しい早稲田大学の渡瀬裕哉招聘研究員に聞いた。
トランプ政権下では「景気回復・低失業率」という事実
現在、世界中のメディアがリベラル化しており、トランプ政権への反発を強めている印象を受ける。様々なメディアの立場から同政権の運営・政策について賛否はあって当然だと認識しているが、それらはファクトに基づいて語られるべきだ。もちろん何かを述べるということは、その話者のイデオロギーとは無縁ではない。しかし、自らが述べる内容の偏りを認識した上で相手に伝える努力も必要だろう。
私は2016年12月「プレジデント」の誌面でインタビューに応えて、トランプ政権の経済政策を分析した結果、好景気が持続していく見通しが高いことを述べさせてもらった。
結果として、16年米大統領選挙から約2年を経た現在でも、米国経済は長期間にわたる景気回復・低失業率を実現している。さすがにそろそろ景気が反転する可能性があったとしても、この好景気はトランプ政権の減税政策・規制緩和政策が後押ししたことは疑いようがない。
一方、17年1月の日経新聞に掲載されたFTのコラムニストの記事タイトルは「『米国第一主義』は間違い」。内容は17年のダボス会議における習近平中国国家主席の発言とトランプ米大統領の発言を比較し、習を持ち上げながら、トランプと側近の通商政策の考え方を批判したものだ。
もちろん既にTPPから撤退に言及していたトランプに対して懸念を示す気持ちもわからないでもないが、習も通商政策の実態として両者ともに肯定できるものではない。
また、18年7月の「トランプ氏、貿易戦争招く」という記事では、冒頭から、
というコラムニストの無益な批判から始まる。