なぜ秋葉原から「本当のオタク」がいなくなったのか

世界有数の電気街として知られる東京・秋葉原は、テレビやPCなどの家電からコンデンサや抵抗器といった電子部品まで、機械なら何でも手に入るだけでなく、アニメグッズやゲームセンター、メイドカフェなどサブカルチャーの街としての側面も持つオタクの街。それが一般的なイメージだろう。

インバウンドの街に変貌した秋葉原に古参のオタクは何を思うのか。(PIXTA=写真)

しかし、今の秋葉原の実態は観光客向けの形骸化した萌えとインバウンドの街であり、オタクの街ではない。それが秋葉原に10年以上通う私の意見だ。

現在ではPCパーツや電化製品はECサイトの価格競争により、秋葉原で買ったほうが安いという状況はほぼなくなり、すぐに欲しいという状況以外では秋葉原で買う理由を見出せない。もちろんセールで最安値になることもあるが、かつてのように、フラッと訪れても得な買い物はできない。

全盛期の秋葉原は、店員もオタクだった。商品のことを尋ねると、自らの経験やマニア同士の評価を踏まえ、強い熱量で商品の説明をしてくれた。

中古スマートフォン販売店で某社のスマホを買おうとした私に対し「カタログ上の数値は優秀だけど、すぐに熱暴走するので使い勝手は悪いです。やめたほうがいい」と商売っ気のない、それでいてここ以外のどこでも聞けない、ありがたいアドバイスをしてくれたことは、今でもはっきり思い出せる。