FTの論調はリベラルなイデオロギーがかなり強い

博士号を持たない修士のコラムニスト(ただし、世銀のエコノミスト経験を持つ著名経済ジャーナリスト)が、学士のみだがグローバル経営者として成功してきたトランプを馬鹿にする構図に辟易する。また、米国大統領の立場であればいくらでも有能な人材を登用できることも忘れるべきではない。

FTの同記事中でも指摘されていたが、トランプの対中貿易戦争は、中国による米国の知的財産権を侵害する制度を変更すること(強制的な技術移転阻止)を目的として掲げている。米国は貿易黒字の大部分を知財収入に頼っているため、中国の知財制度の変更は必須の課題であり、中長期的な将来を見据えれば問題解決に着手するのは当たり前だ。

この環境においてはハイテク産業への補助金は輸出補助金とほぼ同様のものであり、それらをターゲットにした通商政策を取ることも道理にかなっている。少し考えればわかることでもイデオロギーに目を曇らせれば見えなくなる。そして、巨額の関税戦争は中国側が耐えられないため、対中貿易戦争はいずれ収束していくだろう。

日本で最も購読されている経済新聞である日経新聞がFTを買収して約3年が経つが、日経新聞の若手記者が書く冷静な論調とFTの扇情的な論調の間にはかなり差がある。FTの論調はリベラルなイデオロギーがかなり強いものであり、トランプ政権側に一定の道理があったとしても、それをなかなか認めようとしないだろう。彼らはいつまで経ってもトランプ政権のせいで世界が崩壊することにしたいはずだ。

日経新聞がトランプ政権の印象に関して日本のビジネスパーソンに与える影響は大きいと思う。そのため、日経の論調がFTによって他の国内紙のように劣化することは問題である。何よりも同新聞の読者が日本や米国の経済が悪くないことを最も実感している層であるに違いない。

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