トランプ大統領が誕生して以来、アメリカで盛り上がっているエンターテインメントの分野がある。

すなわち、「コメディ」である。とりわけ、「レイトショー」と呼ばれる、その時々のニュースなどをネタにして笑いにする番組が連日人気を集めている。

トランプ氏の物まねでエミー賞を受賞したアレック・ボールドウィン氏。(AFLO=写真)

さまざまなコメディアンが、大統領やその家族、政権幹部、政治家たちのふるまいをネタにして笑いをとっている。トランプさんの就任以来、視聴者数もうなぎのぼりだという。

グローバル化の中で、社会や経済が不安定化し、戦争などのリスクも増大している。人工知能など、文明のさまざまな発展が見られる一方で、明日がどうなるかわからないという不確実性もある。自分の仕事がなくなってしまうかもしれない。こんな時代だからこそ、笑いが必要とされる。

もともと、笑いはネガティブな感情を乗り越え、前向きに生きるために進化してきた。

有力なのは、「偽の警告」仮説である。群れでいるときに、敵が近づいてきたことを知らせるために、声を上げる。そのことで、仲間たちが逃げたり闘いの準備をしたりする。

しかし、その警告が間違いだった、とわかったら、仲間たちを安心させなければならない。いたずらに不安や恐怖に支配されていると、うまく生きることができない。そこで、不安の「解毒剤」として、笑いが進化してきたと考えられている。

最近の研究によって、笑いには、さまざまな健康上の利点があることがわかってきた。痛みが和らぐという、鎮静の効果があったり、免疫系の働きが高まったりすることも示唆されている。

これらの点に注目して、笑いを治療に用いる試みも行われている。ストレスを解消し、免疫系の活動を高めるうえで、笑いが大いに役に立つことがわかってきたのである。