米国でトランプ政権の「余命1年説」が広がっています。ひとつのきっかけは、大統領経験者のブッシュ父子のトランプ批判。父子は「共和党はなぜこんな男を大統領候補に指名してしまったのか」と引導を渡しています。では具体的にどう動くのか。在米ジャーナリスの高濱賛氏が「4つのシナリオ」を解説します――。

「トランプは『口数の多い自惚れ屋』」

ドナルド・トランプ米大統領がアジア歴訪を終えて帰国しました。各国で「国王」待遇を受けていましたが、米国での評判は散々です。与党の共和党もコントロールできず、目玉公約だった医療保険制度改革(オバマケア)廃止は事実上頓挫。税制改革案もお先真っ暗という状況です。

マーク・K・アップデグローブ『The Last Republicans』(Harper、未邦訳)。カバーにあるのは大統領経験者であるブッシュ父子の写真。

そしてついに共和党保守本流エスタブリッシュメントの重鎮、大統領経験者のブッシュ父子が沈黙を破って「トランプは『口数の多い自惚れ屋』(Blowhard)だ。共和党の魂(Soul)をぶち壊してしまった」と引導を渡しています。

ブッシュ第41代大統領(父)と第43代大統領(子)の「トランプ批判」は、このほど出版された「The Last Republicans」(最後の共和党員)という本の中に出てくるものです。この発言は共和党内に波紋を広げています。共和党歴代大統領の発言だけに重みをもっているわけです。

発足直後からの「短命説」が再燃

ブッシュ父子は、「大統領失格」の理由として、トランプ氏の品位のなさ、瞬間湯沸かし器のような気性、ツィッターでの不用意意で挑発的なコメント、そして政治経験ゼロからくる「行き当たりばったり政治」への失望と憤りを挙げています。

父子は、「共和党はなぜこんな男を大統領候補に指名してしまったのか」という共和党員としての自責の念に駆られているのです。

外交交渉でもカネ、カネ、カネの結果主義。そこにはアメリカが長きにわたって築き上げてきた理想や道義はひとかけらもありません。

就任から10カ月、選挙公約だった政策は議会では一切通っていません。イスラム圏の一部の国からの入国規制措置については、議会の承認を必要としない「大統領令」で強引に実施しようとしましたが、裁判所から「米国憲法違反」で止められてしまいました。

政権運営のお粗末さに加え、「ロシアゲート」疑惑追及の手が、「トランプ城」の本丸にじわじわ押し寄せているのです。

このような状況下で、政権発足直後から出ていた「政権短命説」がここにきて再燃しています。「政権短命説」には4つのシナリオがあります。