米大統領選にロシアが干渉していたとする「ロシアゲート」疑惑をめぐり、トランプ米大統領が窮地にある。そもそもなぜトランプ氏やその取り巻きたちは、ロシアに近付いたのか。在米ジャーナリストで、『結局、トランプのアメリカとは何なのか』(海竜社)の著者・高濱賛氏は「以前からトランプ氏はロシアに親近感をもっていた」と指摘する――。
2017年7月7日、「G20」が開かれているドイツ・ハンブルクで行われた米露首脳会談。ロシアのプーチン大統領とトランプ米大統領。(写真=AP/アフロ)

次々と起訴されるトランプ元側近たち

ドナルド・トランプ米大統領がアジア歴訪の最中にも、アメリカ本国では連日のように政権を揺さぶりかねない出来事が相次いでいます。

ロシア疑惑を捜査しているモラー特別検察官チームは、10月末、トランプ選挙対策本部長だったポール・マナフォート氏らを起訴したのに次いで、日本でもおなじみのマイケル・フリン前大統領補佐官(国家安全保障担当)を起訴する方針を固めたようです。

フリン氏は、選挙中からセルゲイ・キスリャク駐米ロシア大使と何度か接触していましたし、日本などにも頻繁にやってきては、菅義偉官房長官や河井克行首相補佐官(当時、現在安倍自民党総裁外交特別補佐)らと会談しています。トランプ氏が大統領に就任する前に安倍首相との初会談をセットしたのもフリン氏と言われています。

フリン氏の「越権行為」はなにも対ロシアだけではなかったわけです。起訴され、捜査が本格化すれば、フリン氏の「対日疑惑」が枝葉の話として出てこないとも限りません。

疑惑の糸がトランプ氏にたどり着く可能性

トランプ氏の周辺の人たちは、なぜ大統領選挙中からこれほど頻繁にロシア政府関係者たちと接触していたのでしょうか。選挙で勝つためにどうしてこれほどロシアの手を借りようとしていたんでしょうか。

もしヒラリー・クリントン氏が大統領になっていれば、せいぜい、大統領選に出て負けた億万長者がロシア政府と緊密な関係にあり、ビジネス・チャンスを広げるために不正行為をやっていたといった程度のスキャンダルとして片づけられたかもしれません。

しかし、トランプ氏が本当に大統領になってしまった。その選挙にロシア政府が介在していたかもしれない、となると話は別です。米大統領選の結果が外国によって左右されたということになるからです。

もしモラー特別検察官チームがトランプ氏側近の疑惑の糸を類寄せていった結果、トランプ大統領にまでたどり着いたらどうなるのか。トランプ大統領の弾劾問題、あるいは下院司法委員会が弾劾決議案を採択した時点、あるいはその前にトランプ氏が政権を放り投げる可能性も出てきます。