シャープV字回復で頭を丸めるべき人
2017年12月7日付でシャープが東証2部から1部に再指定された。
債務超過で2部落ちしてから、わずか1年4カ月のスピード復帰だ。シャープは台湾の鴻海精密工業から約3900億円の資本支援を受けて、筆頭株主となった鴻海の子会社として経営再建に取り組んできた。コスト削減などの構造改革を進めて、17年3月期決算では営業利益が3年ぶりに黒字化、主力の液晶パネル事業を中心に業績も順調に回復してきた。
驚異的なV字回復の原動力が、鴻海との連携にあることは疑う余地もない。鴻海のグローバルネットワークを活用することによる生産、購買、物流などのコストダウン効果と規模の経済はもちろん、取引相手とのさまざまな交渉においても鴻海の力をバックに、資金不足で足下を見られていたときよりもはるかに有利な条件を引き出すことができる。
鴻海のテリー・ゴウ(郭台銘)会長がシャープに支援を申し出たとき、やれ「黒船だ」「乗っ取りだ」とわめき散らしていた連中は頭を丸めて反省したほうがいい。
彼は愛してやまないシャープの再生を、鴻海の副総裁で30年来の右腕である戴正呉氏に託した。テリー・ゴウ会長は日本語が話せないが、日本での駐在経験がある戴正呉社長は流暢だ。
戴社長は社員に向けた就任メッセージで「オリジナル」にこだわったシャープ創業者の早川徳次氏の創業精神、経営哲学に立ち返る重要性を強調する一方、信賞必罰の徹底を宣言した。実際、年齢や性別、国籍に関係なく成果を出した社員には賞与や特別ボーナス、ストックオプションなどで報いる鴻海流の人事制度に切り替えて、優秀な人材や若手を積極的に掘り起こしている。
結果の出せない社員や年配社員には非常にきつい。だが、リストラに疲れ果てたシャープの社員に生気が戻ってきたのは確かだ。まだ利益率は低いが、鴻海のスケール感とテリー・ゴウ会長や戴社長の世界に打って出るアグレッシブな姿勢は必ずプラスに作用するだろう。戴社長は「人に寄り添うIoT企業を目指す」と脱家電を明言しているが、内輪揉めばかりしている日本の家電メーカーではなかなかここまで大胆に舵を切れない。
鴻海のマネーとパワーを借りて解体の危機を乗り切り、生まれ変わろうとしているシャープ。片や経産省主導の解体方針で稼ぎ頭の半導体事業を売却、黒字のメディカル事業も家電のブランドも売り払った東芝は再起不能な崩れ方をしている。
歴史を刻んだ同じ電機メーカーでありながら、現状は対照的だ。そして近年、「隠蔽」をめぐる日本企業の不祥事が後を絶たない。動力の主役が馬車から蒸気機関へ、蒸気機関からディーゼル機関へ移ったように、企業にも「置き換え」が起きてきた。新しいタイプの企業が勃興して世界を席巻する一方で、主役の座を奪われた企業は廃れて舞台から消えていく。