なぜ衆院選で希望、民進は自爆したのか

2018年の日本の政治を展望するために、昨年10月の総選挙をいま1度振り返ってみたい。臨時国会冒頭に安倍晋三首相が衆院の解散を宣言して選挙戦はスタートした。

序盤から一手に衆目を集めたのは先の都議選で圧勝した都民ファーストの会を率いる小池百合子都知事の動向である。小池都知事は全国政党「希望の党」を立ち上げて、民進党の脱党組がこれに合流、自身は代表に就任して小池劇場の幕が上がる。日本のマスコミの悪い癖で、地域政党からステップアップした新党が何を目指すのか、検証もないまま追認するように小池劇場に付き合ったために、一気に希望の党ブームが巻き起こった。

いまや「首相が最も恐れる男」か(安倍晋三首相と小泉進次郎筆頭副幹事長)。(時事通信フォト=写真)

これに自民党以上に強い危機感を抱いたのは民進党だ。「名を捨てて実を取る」と当時の前原誠司代表は格好をつけたが、要は「ブームに乗らないと勝てない」ということで、民進党は希望の党への合流を図る。しかし前原代表が民進党の立候補者全員の公認を求めたのに対して、希望の党は安保法制や憲法改正に対するスタンスなどで厳しいスクリーニングを行ってリベラル派を振るい落とした。

また細野豪志元環境相が「三権の長経験者の合流はご遠慮願いたい」と菅直人氏や野田佳彦氏ら首相経験者の入党を拒否した。結果的にはこの“選別”が「排除の論理」との批判を浴びてブームにブレーキをかけ、さらに野党分裂、立憲民主党というライバル野党を生み出すことにもつながった。

小池都知事自身が出馬に踏み切らなかったことも党の勢いを削いだ。後継都知事に小泉純一郎元首相を指名して自分は衆院選に出馬し、都知事選を衆院選の同日にぶつける。こうしたオプションもありえたわけで、そうなれば小泉劇場と小池劇場の相乗効果で、選挙終盤までブームを引っ張ることもできた。

しかし党代表の小池都知事は出馬しなかった。にもかかわらず、「これは政権選択選挙」と言い切った。選挙後の首班指名については都議選で連携した公明党の山口那津男代表の名前を一時期ちらつかせたが、その後「結果を見て決める」とした。これも大きなミステークで、政権選択選挙で党として首班指名が決まっていないというのは、政治の常識では考えられない。

しかも小池都知事は日本維新の会代表である松井一郎大阪府知事と大村秀章愛知県知事との連携をアピールしていたが、維新は同会共同代表の片山虎之助参議院議員を首班指名する。最初から矛盾をはらんでいた三都物語が崩壊するのは当然だった。