今後どれだけ代償を支払うか、見当もつかない

神戸製鋼所の品質データ不正問題はアルミ・銅事業部門から始まって主力の鉄鋼事業部門や機械事業部門などでも発覚、データ改ざんなどの不正が長期にわたって組織ぐるみで行われてきた実態が明らかになった。不正の対象になった部材を使用している国内外の企業は多数に及び、今後リコールや部品交換の費用請求、損害賠償リスクも含めてどれだけの代償を支払うことになるか、見当もつかない。すでに国際標準化機構(ISO)の国際規格認証が一時停止もしくは取り消された工場もあって、神戸製鋼の前途は厳しい。三菱マテリアルの子会社や東レの子会社も同じような根の深い問題を公表し、日本の素材企業に何があったのか、と信頼性に大きな疑問符がついている。

データ改ざん問題で会見し、頭を下げる神戸製鋼の川崎博也会長兼社長(写真中央、2017年11月10日)。(AFLO=写真)

不正発覚のきっかけの多くは内部告発で、今回もそうなのだが、取引企業はなぜ気付かなかったのかという疑問も湧く。通常、工業製品は強度など顧客と取り決めた技術仕様に基づいて購買契約をする。スペックに適合しているかどうか出荷側は検査するし、顧客も受け入れ検査を行う。恐らく、神戸製鋼と長らく取引するうちに受け入れ検査をスキップするようになっていたのだろう。受け入れ検査もコストがかかる。Aランクの納入業者は検査なし、Bランクは抜き打ち検査、Cランクは全数検査、といった体制になっていたのではないか。中国辺りの部材は全数検査しても、付き合いの長い神戸製鋼の部材は検査がスキップされてきた。不正問題の裾野が広がった背景には、そういう商習慣上の側面もあったのだろう。