世界の優良企業はQAとQCをハッキリ分ける

世界の優良企業はQAとQCをハッキリ分けて考えていて、QA担当者の権限が社長より大きいのは常識。私がコンサルタントとして機構改革などを頻繁にやっていた1980年代には、社長より上の権限を持つQAを置いた組織図をよく書いたものだ。実際、QAがリリースに待ったをかけるようなケースはそう多くはない。QAの出る幕は5年に1度もあればいいほう。それでもかつてはQAの重要性を認識していた良心的なメーカーがたくさんあった。QAを担当するのは大概シニアのエンジニア。もはや出世欲はないが、技術というものをよく理解していて、マーケットの情勢や過去の失敗事例にも通じている。そういう人材にQAを担当させることが重要だ。社長や事業部長に直言し、時には販売計画をストップするのだからQAは社内的には嫌われる存在だが、万が一のときにはそれが命綱になる。

ところが「失われた20年」のうちに組織変革を模索したり、コストカットを重ねていくうちに、日本企業の組織図からQAがなくなったり、存在していたとしても盲腸のような無用の長物になって機能を果たさなくなった。神戸製鋼や三菱マテリアル、東レのみならず、さまざまな業界でメーカーの不正が次々と明らかになって日本の安全神話を揺るがしているのは、日本の産業界からQA発想が欠落してきたがゆえの綻びと見ることもできる。経営が力を持ってくるとQAが弱まるという側面もある。「プロ経営者」と呼ばれる魚谷雅彦氏の下で業績が好調な資生堂が、この1年で立て続けに4回も商品の自主回収を行った。業績は回復しているのに自主回収が多発する理由はなぜか。やはりQAが機能していないからだ。会社立て直しのために、あるいはグローバルな競争を勝ち抜くために、社外から呼ばれるのがプロ経営者だが、業績アップのシナリオが優先されるからどうしてもQAはおろそかになりがちなのだ。