製品データ改竄が大きな問題となっている神戸製鋼所。また、無資格の従業員に長年、完成検査をさせていた日産自動車やスバル。なぜ、不正が起きたのか。経営コンサルタントの小宮一慶氏は「原因のひとつは経営陣の“考え方”にある」と指摘する。小宮氏が考える「強い組織」の例は、1000年以上続く宗教団体。その「考え方」は、どこが違うのか――。
不祥事を起こす企業・人の共通点とは何か?
▼強い組織の根幹は「考え方」
神戸製鋼所や日産、スバルなど、日本を代表する大企業の不正が続出しています。
これにより、「メイド・イン・ジャパンは高品質」という国内外に定着してきた信用に傷が付いたことは確かです。また、まじめに仕事をしている大多数の企業や働く人にとっては非常に迷惑な話でもあります。
なぜ不祥事が発生したのか。さまざまな原因が取りざたされています。
そのひとつとして、「グローバル競争が激化したこと」が挙げられます。競争激化の中で企業はコスト削減に迫られ、正社員を非正規の雇用者に代えたり、十分な時間を品質管理に充てられなかったりした結果、不正が起こっているというのです。
もちろん、否定はできません。厳しい競争の中で、コスト削減を図ろうとするのは当然だからです。しかし、それだけが原因と考えるのは問題の本質を見誤りかねません。
というのは、「グローバル競争の激化」は日本企業にだけ起こっていることではないからです。それなら、日本や他国の多くのグローバル企業でも同じことが頻発しているはずですが、そうした事実はありません。
今後ますますグローバル競争が激しくなる中で、競争環境だけに原因を求めるのは不十分です。この問題はグローバル企業にだけ起こる問題ではなく、国内だけで事業を行う企業にも起こりうる問題です。また中小企業も対象外の話ではありません。
▼揺ぎないビジョンがない企業・人が不祥事を起こす
私の愛読書のひとつに『ビジョナリーカンパニー』(J.C.コリンズ他著、日経BP社)があります。初版が発売されてすでに22年が経過するビジネス書ですが、この本では、企業のビジョンや理念を守り通すことの大切さを述べています。さらに、それを守り通した企業のほうが、売上高や利益だけを追い求めていた企業よりも、結果的に高い株価を維持している(=高い利益を出している)ということも説明しています。
「強い組織」を維持できる企業と、不正を生んでしまう企業の差。
それは、経営陣がビジョンや理念を企業経営の根本と考えているのかいないのか、ということの差だと私は考えます。今回不祥事を起こした企業はもちろんのこと、日本の企業に勤める全ビジネスパーソンは自らを今一度振り返らなければなりません。