物申せない中で、正論を吐ける小泉進次郎氏

総選挙の結果を受けて、18年の政治はどう動くか。

まずは野党。「筋を通した」と評価を上げて野党第一党にのし上がった立憲民主党だが、判官贔屓だけでは続かないし、野党再編のコンダクターになれるとも思えない。希望の党はもはや絶望の党に変わり果てた。私が知っている希望の党の議員のほとんどは、いかなる理由をつけて脱出するかを考えている。次の選挙に向けて、いかに袂を分かつかしか関心がない。野党再編には強烈なリーダーシップを持った人間が必要だが、今の野党には見当たらない。民進党から希望の党に移った連中は選挙に勝つためなら簡単に信念を曲げて「排除の論理」にサインするのだから、国民の信頼が得られるはずもないのだ。

一方の安倍自民党は野党の食い合いというオウンゴールで勝っただけで、国民から圧倒的な信任を得たわけではない。にもかかわらず、選挙からほどなくして加計学園の獣医学部新設に認可が下りて、今春にも開校される運びになった。安倍首相からすれば、「国難」が1つ突破できたのだからおめでたい。

国民感情としては安倍政権に対する信頼は薄いし、改憲勢力約8割がそのまま民意とはならない。憲法9条の3項に自衛隊を明記したい安倍首相は、憲法改正の発議に着手するかもしれない。

しかし、合憲と言い張ってきた自衛隊をなぜ今になって憲法で追認しようとするのか、という疑念が当然湧く。9条3項の問題だけで国民投票に向かえば、「大手を振って自衛隊を軍隊につくり替えて、いずれ徴兵制も復活させる気だ」という批判の恰好のターゲットになる。反対勢力のほうが議論を展開しやすい。産経、読売を除いてマスコミもこぞって反対するだろう。つまり発議はできても、国民投票には弱い。従って改憲論議は安倍首相が意図する通りには進まないと思う。

9月には自民党総裁選がある。安倍首相は当然立候補して3選を目指すだろうが、決して万全ではない。一寸先は闇というが、「もりかけ」とは別の、新たな火種が噴き出す可能性もある。意外に早く躓くかもしれない。

一応ネクストと目されているのは石破茂氏、岸田文雄氏、野田聖子氏、河野太郎氏の4人だが、こちらはこちらで現総裁に競り勝つほど票は集まらない。ただし、自民党内では「小泉進次郎まで飛べば圧勝する」という見方がある。父親は「変人」だったが、息子はきわめて常識人で、安倍首相にも苦言を呈する。教育無償化などにかかる財源2兆円を捻り出すために、消費税増税分の使途見直しのほかに不足分の3000億円の負担を安倍首相は財界に要請した。これに対して筆頭副幹事長の小泉氏は「党は何も聞いていない。このままだったら自民党は必要ない」と批判した。

安倍一強の物申せない空気の中で、これだけの正論を吐けるのだからやはり器が大きいのだろう。農政改革でも思い切った提案をしたし、地方や被災地に頻繁に足を運び、地味な役職を労を惜しまずにこなしてきた小泉氏は党内の人気も高く、隠れファンも多い。総裁選に立候補すれば、勝ち切る可能性は低くない。

(構成=小川 剛 写真=時事通信フォト)
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