中高年正社員と長時間労働者は年収ダウンへ

次に、給料水準に変化がなさそうな人。

正社員については、成果主義賃金が主流になっているように見えて、実はまだまだ年功要素の残る企業は少なくありません。

『同一労働同一賃金で、給料の上がる人・下がる人』(山口俊一著・中央経済社刊)

仕事給の傾向が強まれば、若手社員層は待遇改善されそうですが、必ずしもそうとは言えません。非正規社員の待遇改善が優先され、本来は若手社員の待遇改善に回るはずの人件費に、シワ寄せが来ると思われるからです。今より下がるということはないでしょうが、賃金の年功カーブが抑えられる分、将来的には厳しくなることが予想されます。

また、管理職については、日本企業の場合、諸外国と比較して、非管理職との給料格差が極めて小さくなっています。待遇面では、報われていないということになります。そのため、仕事の役割や責任によって処遇を決める同一労働同一賃金は、管理職層にとっては追い風となるはずです。ところが、すでに年功賃金を享受している層が中心ということもあり、現実的には、若手管理職を除いては、総体的にあまり上がらないと思われます。

最後に、給料が下がりそうな人。

まずは、親会社からの出向社員。これまでのところ、子会社プロパー社員との賃金格差について、議論される気配は出ていません。出向させる際に、子会社の賃金水準に引き下げることは、労働条件の不利益変更という問題が発生するためです。ただし、同一賃金が法制化されれば、子会社の社員が裁判を起こすケースが出てくるかもしれません。同一労働であることが、比較的証明しやすいからです。そうすれば、子会社への転籍といった方法を経て、出向者の賃金水準は下がっていく可能性があるのではないでしょうか。

40代後半から50代の中高年(男性)正社員は、同一労働同一賃金で、最も厳しい影響を受けそうです。正社員と非正規社員の賃金格差是正を実施するときに、「正社員側を引き下げることで、是正してはならない」と言われています。しかしながら、企業の人件費には限りがあります。非正規社員の待遇改善がなされても、全体の生産性が上がらなければ、賞与額の調整などにより、企業は人件費の抑制を図ろうとするでしょう。また、年功賃金是正の動きが加速すれば、中高年(男性)正社員の待遇ダウンは避けられません。

そして、長時間労働者。働き方改革により、長時間労働は減少していくと見込まれます。しかし、「生産性連動賞与」のように残業代として還元するような施策は、企業の主流にはなっていません。そのため長時間労働を続けてきた人は、残業代が減る分、収入が下がることになります。

このように「同一労働同一賃金」は、賃金水準の是正という意味で、すべての働く人に大きな影響を与えることになります。今後の推移をしっかり見極めていく必要がありそうです。

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