不本意非正規の雇用者にしわ寄せ

潜在的な労働供給の余地は、非正規社員の中からも指摘できる。同年4~6月期時点の非正規雇用者数は2018万人となり、全雇用者数の37.1%を占める。そして中でも、正規の仕事がないという理由で非正規になっている雇用者(以下、不本意非正規)は、今年4~6月時点で完全失業者を大きく上回る285万人存在する。

特に、わが国で非正規の雇用者比率が上がりやすい背景には、正社員を解雇しにくい日本特有の雇用慣行がある。例えばリーマンショック後のように急激に業績が悪化する局面では、企業は最大のコストである人件費の削減を余儀なくされる。ところが、人件費の大部分を占める正社員の雇用は調整しにくく、非正規社員または新卒採用を減らすかしか現実には方法が無い。こうした日本特有の雇用慣行により、不本意非正規の雇用者にしわ寄せが来やすい。

こうした雇用環境の深刻さは、やむなく非正規で働いている人や、働きたくても求職活動をしていない人も踏まえた広義の失業率を計測することでわかる。実際、本当は働きたいのに求職意欲を喪失した人を含めた広義の失業率は同4~6月期時点で4.4%となり、同時期の完全失業率3.0%を1.4ポイントも上回っている(資料4)。また広義の失業率に出産・育児、介護・看護のため求職活動を行っていない人たちも含めると、その水準は5.9%にも上る。

さらに、不本意で非正規社員になっている人まで含めた広義の失業率に至っては、同4~6月時点で10.0%と前期から0.1%ポイント上昇している。つまり、こうした広義の失業率で見れば、労働需給は明確なひっ迫を示していないことがわかる。つまり、労働需給がタイトになり、人手不足感が強まった状態で雇用を増やそうとすれば、企業は賃金を上げる必要性が出てくる。しかし、働きたくても求職活動をしていない人や、意図した雇用形態で働けていない人が多数存在する状況では、賃金が上がりにくい経済構造にあることを意味しているといえよう(資料5)。