市場のプロたちが「景気後退」を見据えた動きを加速させている。理由はこの2月以降の株価下落だ。下落率は2012年12月以降で3番目に悪く、市場の潮目は確実に変化しつつある。第一生命経済研究所の永濱利廣・首席エコノミストは、「今年も実質賃金がマイナスになり需要に期待できないうえ、米中貿易戦争が深刻化すれば、日本の景気後退が前倒しでやってくる」と予想する――。
アベノミクス以降で3番目に悪い大幅下落
足下の経済動向について、筆者は非常に危機感を抱いている。背景には、2月以降の株価の下落速度がアベノミクス以降で見ると非常に大きかったことがある。
実際、2012年12月のアベノミクス以降の日経平均(月平均)の下落幅を大きい順に並べると、過去最大の下落幅を記録したのがチャイナショック第2弾(2015年12月~16年2月)であり、その次がチャイナショック第1弾(2015年7~9月)となっている。今回の株価下落はその次に大きく、2013年6月のバーナンキショックに匹敵する。それだけ大きなマーケットの調整が起こっていることがわかる。
なお、2回のチャイナショックが生じた約半年の間に、ドル円レートは10円近く円高が進行し、景気ウォッチャー調査の現状判断DIも2014年4月の消費税率引き上げ時以来の40.9ポイントまで低下した。また、バーナンキショックの後は、ドル円レートが96円台まで一気に6円以上の円高が進み、景気ウォッチャー調査の現状判断DIも2カ月連続で悪化することになった。