今年1~3月期の実質GDPは、前期比年率▲0.6%と、9四半期ぶりのマイナス成長となった。だが、最終需要はそこまで落ち込んでおらず、景気はそれほど悪化していないという見方もある。第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストは、現在の実質GDP統計は日本経済を過大評価するという特性があるため、所得を表す実質GDIも併用しなければ、適切な政策も打てないと指摘する――。

実質GDPは日本経済の実力を過大評価

2018年1~3月期の実質GDPは、6月8日公表の2次速報で前期比年率▲0.6%となり、9四半期ぶりのマイナス成長となった。しかし、民間在庫品増加(民間企業の売れ残った在庫の増加分)を除いた最終需要ベースで見ると、前期比年率▲0.0%とマイナス幅は縮小し、少なくとも最終需要面から見た経済規模はそこまで悪化していないとする見方もある。ただ、問題はGDPは必ずしも現在の日本経済の実力を反映しているとは言えないことにある。

GDP(Gross Domestic Product、国内総生産)とは、ある期間内(例えば1年間)に国内で生み出された付加価値の合計である。「生産」「需要」「所得」という三つの側面のどこから見ても等しくなる「三面等価の原則」があり、通常は実質GDPに変化が生じれば、それと連動して実質所得にも変化が生じるはずである。三面等価とは簡単に言うと、生産されたものは必ず誰かの所得(分配)となり、所得は何らかの形で支出(需要)されるので、「生産」「需要」「所得」は、3面のどの側面から見ても等しくなることを指す。

しかし、所得から見た実質的な現在の日本の経済規模は、生産面や需要面から見た経済規模の変化に加え、実質GDPに反映されない交易条件(輸出品と輸入品の交換比率)の変化にも大きく左右される。特に日本の貿易構造を見ると、輸出が加工組み立て品に偏る一方で、輸入が鉱物性燃料に偏っているため、「三面等価の原則」が働きにくいという、特有の経済構造となっている。