2019年10月、消費税率の引き上げが予定されている。目的のひとつは財政赤字の縮小だが、第一生命経済研究所の永濱利廣・首席エコノミストは「財政赤字を縮小させる効果は極めて限定的。むしろデフレをさらに長期化させ、景気後退を招く可能性が高い」と指摘する――。
家計の負担増加額は前回の3割強
今年10月に控える消費税率引き上げにより、家計全体でどの程度負担額が増えるのだろうか。計算すると、一時的な対策を除けば、年2.5兆円程度の負担増となることがわかる。これは、前回2014年4月の消費増税の時の負担額の3割強にとどまる。
前回は、そもそも税率の引き上げ幅が3%だったため、それだけで年8.2兆円の負担増だった。そこに、年金保険料率の引き上げ等による社会保障の負担増が加わったため、低所得者向けの給付金や住宅ローン減税等の増税対策の負担減を加味しても、トータルでは年8.0兆円の大きな負担増となった。これにより、増税前の個人消費は増加傾向にあったが、増税後の反動減で落ち込んだ個人消費は、その後も横ばいで推移してしまっている(図表1)。
これに対し、今回の消費増税の負担額は、税率の引き上げ幅が2%にとどまることに加えて軽減税率が導入され、お酒や外食を除く食料品の税率は8%のままである。このため、家計の負担額は4.6兆円にとどまることになる。
たばこ税や所得税の見直し等により年0.3兆円の増税が加わるものの、一方で年額2.4兆円分が幼児教育の無償化や社会保障の充実として還付されることになる。このため、家計への総合的な負担増加額は年2.5兆円と、前回8兆円の3割強にとどまることになる(図表2)。
さらに今回は、一時的な措置として、(1)中小小売店等でのキャッシュレス決済でポイント還元することで0.3兆円、(2)低所得子育て世帯向けのプレミアム商品券配布で0.2兆円、(3)住宅購入者等へ0.2兆円等の支援が行われる。このため、増税後の1年目の負担額は年2.1兆円、2年目の負担額は年2.3兆円にとどまり、年2.5兆円の負担になるのは増税後3年目以降になる。