「花粉の大量飛散」が日本経済に大きなダメージを与えそうだ。第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストは「花粉の大量飛散は1~3月の個人消費を約5691億円も押し下げる可能性がある」という。影響があるのは、どんな業種なのか――。
経済が成熟・低成長となった日本では花粉の飛散量が成長率に大きな影響を与える。※写真はイメージです(写真=iStock.com/TAGSTOCK1)

記録的猛暑で「2013年以来の大量飛散」か

昨夏は記録的な猛暑に見舞われた。特に7~9月期の全国平均気温は平年を+1.0℃上回り、2003年以来の高温となった。この影響により、今春は花粉が大量に飛散しており、今春の花粉は6年ぶりの大量飛散の恐れとの予測もある。特に、スギ花粉の飛散は5月上旬まで続くと予想とされている。この花粉が日本経済に大きなダメージを与えそうだ。

一般的に、花粉の飛散量に関係する統計として、前年夏の平均気温や日照時間がある。昨夏の記録的猛暑の影響で、今春の花粉飛散量が2013年以来の大量飛散になる可能性も指摘されているが、実際に2018年夏の平均気温と日照時間の程度を見ると、2013年以来の高水準だったことがわかる(図表1)。

花粉症は日本人の3人に1人が患者とも言われ、今や「国民病」と呼べる存在であり、花粉の大量飛散が現実のものとなれば、経済全般にも影響を及ぼすことは避けられない。

レジャー、小売、外食が不調になる

花粉の大量飛散は、主に以下の経路を通じて日本経済に影響を及ぼす。まず、花粉が大量に飛散すれば、花粉症患者を中心に外出が控えられ、個人消費に悪影響を及ぼすことである。具体的にはレジャーや小売、外食関連等の売れ行きが不調になると見られる。実際、前年夏の気温と年明けの家計消費支出には関係がある。1~3月期の家計消費(前年比)と前年7~9月期の気温(前年差)の関係を時系列で見ると、夏場の気温が前年を上回った翌春の消費はおおむね減少する関係があり、前年の猛暑は翌春の個人消費にとってマイナスであることが示唆される(図表2)。