そして、1~3月期の家計消費水準指数の前年比と前年7~9月期の平均気温(全国平均の前年差)の相関を品目ごとに見てみると、2000年代以降では外食を含む「食料」や、レジャー関連を含む「教養娯楽」、外出頻度が増えれば支出されやすくなる「被服及び履物」などの支出で前年夏の平均気温と強い負の相関関係が表れていることがわかる(図表3)。つまり、花粉の飛散量が増えると、「食料」や「教養娯楽」「被服及び履物」の支出が減ることが示唆される。
一方、外出頻度が減れば支出が増えやすくなる「光熱・水道」や、薬やマスク・医療費などを含む「保健医療」や空気清浄機などを含む「家具・家事用品」等の支出で正の相関関係がある。つまり、花粉の飛散量が増えると、「光熱・水道」や「保健医療」「家具・家事用品」などの支出が増えることが示唆される。
「外出控え」の影響で、デパートの売り上げも落ちる
また、店舗形態別の売り上げとの関係を見てみると、「百貨店」では花粉の大量飛散による負の相関が観測される一方で、「スーパー」で正の相関が観測される。この背景としては、花粉症になると「百貨店」に遠出して買い物する頻度が少なくなることや、外出が控えられることで売り上げが落ちやすい「被服履物」の売り上げ割合が高いことが上げられる。一方で「スーパー」は、比較的近場にあることで買い物の頻度が高くなることや、薬やマスク等の「保健医療」関連の商品を多く扱っているためと推測される。
経済の平均成長率が4%程度あり、なおかつ花粉症患者が少なかった80年代までなら、こうした要因が個人消費に悪影響をもたらすことは想定しにくかっただろう。しかし、90年代以降になるとバブル崩壊により、経済の平均成長率が1%程度に低下する一方、花粉症患者も増加しているため、花粉の大量飛散が個人消費に悪影響を及ぼしやすくなっていると考えられる。つまり、今年の花粉の大量飛散が、日本経済に悪影響を及ぼす可能性は否定できないだろう。
なお、過去の経験によれば、花粉の飛散量で業績が大きく左右される代表的な業界としては、製薬関連やドラッグストア関連がある。また、カーテンやメガネ関連のほか、乳酸菌食品関連等も過去の花粉大量飛散時には売り上げが大きく伸びている。
昨夏の猛暑により1~3月期の家計消費は平年比で▲1.0%減少
では、昨年の猛暑による花粉の大量飛散によって、日本経済全体にはどの程度の影響が生じるだろうか。そこで、気象庁の気象データと内閣府の「国民経済計算」を用いて、過去のデータから前年7~9月の平均気温と1~3月の個人消費の関係式を作成し試算を行ってみた。すると、1996年からのデータで見れば、前年7-9月の平均気温が1℃上昇すると、翌1-3月の実質家計消費支出が▲0.9%押し下げられる関係があることがわかる。