人手不足にもかかわらず、日本の賃金が上がらない。OECD加盟国では、首位のルクセンブルクに遥か及ばず3万9113ドルと中の下の位置づけ。理由として第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストは、日本特有の雇用慣行の存在を指摘する。
「終身雇用、新卒一括採用、年功序列賃金などの慣行のために、同じ会社で長く勤めることによる恩恵が大きく、転職しようという誘因が働きにくいのです。ゼネラリストの育成に熱心なために、スキルの格差も広がりにくい。結果として労働市場の流動性が低くなり、企業も人材を繋ぎ留めるために高い賃金を出す必要がない。しかも、経営者層の多くは、リストラによって評価されてキャリアを積んだために、縮小の発想が抜けきらないことも影響しています」
解決策はどこにあるのだろうか。
「労働市場の流動化を促すために、正社員の解雇規制の緩和が必要です。業績が悪化しても解雇できないと考えるから企業も賃上げに二の足を踏むわけです。規制緩和には懸念もありますが、実際にはブラック企業とレッテルを貼られるリスクがあり、そう易々と大量解雇に踏み切ることはありえないはずです」(永濱氏)
反対が根強い解雇規制の緩和には政治の決断がいるが、どうなるか。
(図版作成=大橋昭一)