「JAL」が「ANA」に差をつけられた理由
2018年2月に発表された国内航空大手のANAとJALの中期経営計画。航空経営研究所の赤井奉久所長は、成長著しいLCCへの対応に両社の差が表れていると指摘する。
「ANAは国内線の市場支配力を維持するために、高収益の羽田発着の基幹路線を自社や提携する会社で確保。さらにLCCのピーチ・アビエーションを子会社化してLCC拡大の歯止めを図る戦略を描いています。一方、JALはLCCのジェットスターに出資しておきながらLCCにどう対応するのか見えてきません」
10年に経営破綻したJALはコストカットや路線整理によって収益力の改善を実現し、17年度の営業利益率は12.2%の見通し。今後も10%以上の確保を目指すが、一方で路線規模の拡大はほとんどせず、機材もANAが17年度末の294機を5年間で41機増やすのに対しJALは17年度末から3年間で3機増の230機とするにとどめる。
「JALは機材の小型化や新鋭化で搭乗率が向上し燃料コストが下がったこともあり、収益力はピークと言えるほど改善しました。一方、財務体質の強化にこだわるあまり成長戦略が十分に描かれておらず、会社をどうしたいのか見えてきません」
成長重視が吉か、安定重視が吉か。
(図版作成=大橋昭一)