※本記事は、川上徹也『「コト消費」の噓』(角川新書)の第3章「『世界一美しい眼科』で、飛ぶようにモノが売れる理由」を再編集したものです。
なぜ「ピーチ」は勝ち残れたのか?
あなたはLCC(格安航空会社)に乗ったことがあるでしょうか? 私は一度の往復だけですが乗ったことがあります。
その一度の体験が「ピーチ・アビエーション」(以下「ピーチ」)でした。
2012年、日本はLCC元年と呼ばれました。「ピーチ」「エアアジア・ジャパン(現バニラ・エア)」「ジェットスター・ジャパン」の和製LCC3社が相次いで運航を開始したからです。
それから5年たった現在、他の2社が苦しんでいるのを尻目に、「ピーチ」は好調でその企業価値を創業当初の7倍にしたと言われています。
その理由はなんでしょうか?
もちろん数多くの理由があるでしょう。
拠点が成田空港か関西空港かの違いも、使い勝手に差が出ている可能性も大きいです。
しかし私は以下の理由が非常に重要だったと考えます。
ピーチだけが「安さ」以外の部分で企業の「人格(キャラ)」を鮮明にした。
詳しく解説しましょう。
まず名前やコーポレートカラーが、今までの航空会社にない斬新なもので、それだけで「人格(キャラ)」は鮮明になっています。
またコンセプトをわかりやすい「空飛ぶ電車」という一言で言い表したこともそうです。
ちなみに「空飛ぶ電車」とは以下のようなことを言います。
・お客さんは駅の改札を通るように自身でチェックインする。
・定刻になるとお客さんを待たず無慈悲に出発する。
・新幹線のワゴンサービスのように飲食物は有料で提供する。
さらに関西空港が拠点の航空会社ということで、以下のように大阪色を前面に打ち出したことも「人格(キャラ)」を鮮明にしました。
・機内での食事にたこ焼きやお好み焼きなどを提供する。
・機内アナウンスに大阪弁を使う。
実際、私が搭乗したのは羽田発着で大阪とは関係ない便でしたが、行きも帰りもパイロットもCAも機内アナウンスの最後には「まいどおおきに!」という大阪弁での挨拶(あいさつ)を(ちょっとだけ恥ずかしそうに)していました。人によっては最初から最後までコテコテの大阪弁で喋(しゃべ)る乗務員もいるそうです。