株式投資では「最低購入代金」が決まっている。知名度の高い企業になれば、その金額は数百万円にもなる。そこで「スマホを使って1000円から株を買えるサービス」が登場した。狙いは20~30代の投資初心者。ITと金融を組み合わせた「フィンテック」の代表例だが、はたして成功するか――。

わずか1000円で株主になれる理由

林和人・One Tap BUY社長最高経営責任者(CEO)

One Tap BUY(ワンタップバイ)は2016年にサービスを開始した「スマホ専業」の証券会社だ。提供する取引はすべてスマートフォンを通じて行う。最大のウリは、1000円単位で個別株を購入できるところだ。一般の証券会社であれば、取引を始めるには100万円前後の資金が必要になる。だが、ワンタップバイであれば、そうした株を1000円から買うことができる。「小分け」にして販売しているからだ。

サービスは、AppleやFacebook、Amazonなどの米国株30銘柄からスタート。17年2月から日本株ETFの3銘柄を追加し、7月からファーストリテイリング、ファナック、キーエンスなど日本株30銘柄の取り扱いをはじめた。

たとえばファーストリテイリングの場合、9月22日現在の株価(終値)は3万3080円。単元株数は100株なので、最低購入代金は330万8000円となる。一般の証券会社であればこれだけの資金が必要になるが、ワンタップバイでは1000円単位で購入が可能だ。

「サービスの狙いは、20~30代に株式投資への関心をもってもらうこと。株式投資は長期投資を前提として若い頃に始めたほうがいい。『1000円単位』『スマホで簡単』ということで、株式投資のハードルを下げるのが狙いです」(林和人社長)

当初から日本株を扱わなかった理由についても「若い世代に知名度が高い企業を聞いた結果、ほぼすべてアメリカの企業になったから」(林社長)という。

ビジネスモデルは、一般の証券会社と同じで、売買に対する手数料だ。異なる点は、一般の証券会社が「委託取引」であるのに対し、ワンタップバイは「相対取引」を行うこと。つまり、売買は市場を介さず同社が相手方となり、顧客は同社が保有する株式を購入する。売るときは同社が買い取る。価格はいずれも市場価格に準じたものになる。

こうしたサービスを成り立たせているのが「自動売買」というフィンテックの仕組みだ。

「取引の裏には自動売買システムがあり、常に市場につながっています。顧客が多数集まるとすぐに単元株になるので、一定以上在庫が増えればシステムが自動で売る。顧客が買って、在庫が少なくなればシステムが自動で買い在庫量を自動調整します。たとえ「日経225」の全銘柄を購入しても単元株で1億円程度。資本金40億円と金融機関のコミットメントラインを合わせれば100億円を超える流動性があるので、資金面での問題はありません」(林社長)