1000円から小口で投資できるサービスは画期的だ。ただ、その分、手数料が高くなるのではないだろうか。林社長は「あくまでも株式投資の初心者のためのサービス。既存の証券会社とも棲み分けられるはず」と話す。
「購入額が高額になると、手数料(スプレッド)はほかの証券会社よりも高くなる場合があります。また証券口座への入金は、一部を除いて、通常の振込手数料がかかります。ただし購入できる銘柄を米国株、日本株とも30銘柄に限定することで、スプレッドを抑える工夫をしています。そもそもワンタップバイは株式投資の初心者のためのサービスですから、ほかの証券会社とも棲み分けられると思います」(林社長)
「貯蓄から投資」への試金石に
ワンタップバイの創業者である林社長は、元々、岡三証券の敏腕営業マンだった。
1964年大阪生まれで、1987年に岡三証券に入社。「大金持ちの華僑を相手に商売する」という野望を胸に、88年から香港・シンガポールで活躍。「夜討ち朝駆け」で香港の大富豪やシンガポール首相のリー・クアンユー氏などを顧客にした。ついには華僑財閥の奥深くに入り込み、香港証券取引所の日々の売買高の3~5%を動かすまでになったという。
2001年、日本で中国株(香港取引所)専業のネット証券「ユナイテッドワールド証券」を設立する。口座数は5万を超え、中国株口座として当時日本最大だった。だが、2008年にシステム障害が発生し、行政処分を受ける。直後にリーマン・ショックが発生。挫折を味わった。
「システムが分からなければ証券営業もできない時代になる」という危機感から、4年間学校に通うなどシステムを猛勉強。2012年にユナイテッドワールド証券を欧米系証券会社へ売却して、20年ぶりに帰国。「これからはアプリの時代がくる」と考え、ワンタップバイの立ち上げを準備した。
現在、ワンタップバイの社員数は約90人。そのうち約半数はシステム関連のエンジニアだ。今後は日本株の個別銘柄を追加していくという。今年8月からはテレビCMを開始し、一気に口座数を増やしていく計画だ。5年後までに口座開設100万件を目指す。
これまで何度も「貯蓄から投資へ」と言われてきた。スマホアプリを通じて、株式投資の初心者を動かすことができるのか。ワンタップバイはその試金石になりそうだ。
1964年、大阪府生まれ。関西大学商学部卒。岡三証券に入社。すぐに香港の現地法人に出向となり営業マンとして活躍。同社を退職後、複数の証券会社の香港法人を経て、2002年に中国株専業のユナイテッドワールド証券を設立。同社を退いた後、13年にアプリを手掛けるマイバンカーを設立。15年に社名をワンタップバイに変更。