日本人で2人目の女性宇宙飛行士である山崎直子さん。東京大学大学院で宇宙工学を学び、国際宇宙ステーションを組み立てるため、2010年にスペースシャトルへ搭乗した一流のエンジニアだ。山崎さんは「これからの宇宙開発には、人工知能の活用が欠かせなくなる」という。それはなぜなのか。今年4月に開かれた「IBM Watson Summit 2017」での講演内容を紹介する。

宇宙からのデータを他のデータと結び付ける

宇宙飛行士の山崎直子氏

宇宙飛行士の山崎直子氏は、2010年4月5日から4月20日まで、地上約400キロメートル上空にある国際宇宙ステーション(ISS)の組み立てミッションに参加した。日本人としては2人目の女性宇宙飛行士である。専門はエンジニアリングで、NASAのスペースシャトルの「搭乗運用技術者」の資格を持つ。

山崎氏は、今年4月27、28日に開かれた「IBM Watson Summit 2017」で、「宇宙と人工知能」というテーマで講演した。「Watson(ワトソン)」はIBMが開発した人工知能で、その特徴は世界で初めて「コグニティブ(認知)・コンピューティング能力」を商用化した点にある。人間と同じように認識、学習、経験を通じて、世界を理解し、人の意思決定を支援することができる。

講演のなかで、山崎氏は「宇宙とワトソンとのつながりについて2点話したい」と切り出した。

1点目は、「ミニチュアの地球」ともいえる国際宇宙ステーションでの課題解決は、地球上のさまざまな社会問題の解決に応用できる、ということだ。

ISSは時速2万8000キロ、90分で地球を1周するスピードで回っている。そのなかで生活する人は国籍、年齢、職業などそれぞれ異なるダイバーシティの世界だ。大きさは約108m×約72mで、全体としてサッカー場とほぼ同じ大きさ。重さは約420トン。部品点数は日本が製作した実験棟「きぼう」だけでも250万点、飛行機の10倍だ。人が搭乗するため、安全性・信頼性に配慮しており、どの部品が壊れても実験が継続できるように、また、2つの部品が壊れても、安全と人の命が守られることが基本要件とされている。