山崎氏は「これだけの部品の実験施設を動かしていくには、ものづくりだけでなく、運用の作業が重要となる。ハードウエアの故障だけでなくソフトウエアのバグ、ヒューマンエラーも含まれる」という。

国際宇宙ステーション

ISSのなかでは人と機械がイーブンな状態にある。人も機械もミスをするという前提で設計されており、お互いに作業をチェックする状態にあるのだ。このような環境で重要なことについて、山崎氏は3つのポイントをあげた。

「状況をきちんと把握すること。予測不可能な事態では、その都度判断すること、そしてチームワークを保つこと」(山崎氏)

この3つはワトソンの「コグニティブコンピューティング」の機能と一致する。つまり、さまざまなデータから状況を把握し、データを意味ある情報に変換する。そのうえで、ワトソンは「ブラックボックス」で解を出すことはしない。解の根拠と一緒に確証の割合を提示する。山崎氏は「分からないことは分からないと根拠を示すことが非常に大きな特長だ」と説明する。

機械・コンピューターと自然言語で会話できるか

また、チームワーク、それも自然言語で会話ができることがワトソンの重要な特長だ。ISSの仕事では、ISSのなかだけでなく、地上の管制官とのチームワークも欠かせない。「今後は人とコンピューター、ロボットを含めた総合的なチームワークが必要となり、自然言語で会話できることが大きな要素となる」(山崎氏)。

「宇宙とワトソンのつながり」の2点目は、ビッグデータの解析と人工知能の活用について。宇宙から人工衛星を通じて大量のビッグデータが生成されるようになっており、ここから新しい価値を生み出すうえで、ワトソンのような人工知能の活用だという。

人工衛星は現在、世界で7000機以上が打ち上げられている。ここから出るデータ量は、膨大で、例えば米国の海洋気象庁の人工衛星が生成するデータは1日で20テラバイトに達するという。これを意味のある情報に変換するには、どうすればいいか。

「そのためにはまず、データをクラウド上に蓄積し、多くのユーザーがアクセスできるようにすること。なかでもIBMの貢献は大きい」(山崎氏)