日本でも人工衛星を50機配備して地球をモニターしようという民間の計画が進んでいる。例えば気象会社は北極海の氷を毎日1回撮影・モニタリングしている。輸送船の新航路を開拓、燃料の節約に役立てようという狙いだ。

「これから小型化・カスタマイズされた人工衛星が増えてくる。地球の周りに数千という人工衛星を配備し、地球をインターネットで結ぶという2020年全地球インターネット構想では、現在、世界でインターネットの普及率は4割だが、今までデータが取れなかった高山、海上などからもデータが取れるようになり、船や飛行機の自動運転の実用化に役立つ」(山崎氏)

地球自身が巨大な生命体と感じた

このような人工衛星からのデータを他のデータと関連づける試みとして、山崎氏は佐賀の茶畑の画像データ、北海道の田畑の撮影データなどを実例として挙げた。適切な収穫時期を見極める実証実験が進行中という。

また、総務省は昨年、宇宙とICTをテーマにした懇談会を発足させたほか、内閣府も宇宙戦略事務局が宇宙データビジネス利用コンテストを始めているという。

最後に山崎氏はこう講演を結んだ。

「宇宙から見た地球は美しい。特に夜景は人の営みの力強さを感じさせる。ISSからのダイナミックで刻々と動く地球の眺めは、地球自身が巨大な生命体のように感じた。人工知能ワトソンは多分野で応用されていくと思うが、その先にはグローバルなエコシステムにつながっていくと期待している。人間は不可能と思われる出来事を可能にしてきた生き物。100年前、アインシュタインは相対性理論を発表したが、現実に高速で移動するISSでは彼の理論に従って、時間が短くなるという現象が体験されている。一つひとつの技術の発展、社会の発展にご尽力されている皆さまに敬意と感謝を申し上げたい」

山崎直子(やまざき・なおこ)
1970年、千葉県生まれ。東京大学工学部卒。96年同大学航空宇宙工学専攻修士博士課程修了。NASDA(現JAXA)に勤務。日本人2人目の女性宇宙飛行士。99年、宇宙飛行士候補に選ばれ訓練開始。2010年4月、スペースシャトル「ディスカバリー」に搭乗、国際宇宙ステーション組み立て補給ミッションに従事。著書に『宇宙飛行士になる勉強法』『夢をつなぐ』『瑠璃色の星』など。
(取材・構成=丸山隆平 経済ジャーナリスト)
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