日頃の「あとでいいや」が、年収や幸福度の格差を生んでいるとすれば――。高年収層の「すぐやる」がどれほど人生に影響しているのか。読者1685人が回答したアンケートから探る。

高年収層でも以前は「先送りグセ」があった

やらなきゃいけないことを、つい先送りしてしまう――。その心当たりは、年収を問わず誰にでもあるはずだ。では「すぐやる」人は何が違うのか。「すぐやる」習慣と年収の関係を探るため、読者1685人にアンケート調査を実施した。

今回の調査でまず浮き彫りになったのは、高年収層も「以前は後回しにしていた」こと。そして彼らは、それを自力で改善していた。つまり「すぐやる」は才能ではなく、自分の取り組み次第で後から身につけられる技術だということだ。「やらなくてはいけないと思いながら、つい後回しにしてしまうことがあるか」を聞いたところ、年収500万円未満の層では約70%が「よくある」「ときどきある」と回答した。一方、年収1500万円以上の層では約61%に低下する。さらに注目すべきは「以前の自分」との比較である。年収1500万円以上の層は以前の約72%から現在の約61%へと10%以上の改善を見せた。年収500万円未満の層がほぼ横ばいであるのとは対照的で、高年収層ほど後回し体質を矯正してきたことが示されている。

即レス習慣にはさらに顕著な差が表れた。「メール・チャットで依頼や質問が来たら、内容にかかわらず、まず即レスする」という問いに「ややあてはまる」「あてはまる」と答えた人は年収500万円未満の約66%から年収1500万円以上の約78%へと段階的に上昇し、年収3000万円以上に限ると約83%が即レスを実践している。年収帯が上がるほどスピードへの意識が高い傾向が鮮明になる。

行動の起点にも違いが見られる。「仕事に取り掛かる際、『モチベーションが上がるのを待つ』ことはしない」と回答した割合は、年収500万円未満で約46%にとどまるが、年収1500万円以上では約57%。年収1500万円以上の層では半数以上がやる気の有無に関係なく手を動かしている。「手を動かせばやる気は後からついてくる」という発想が、高年収層に目立つ行動原理と言えそうだ。「常にToDoリストを作っている」の実践率も年収500万円未満の約64%に対し、1500万円以上では約75%と差が開いた。タスクの可視化が「何から始めるか」を明確にし、先送りの余地を消す。意志力ではなく仕組みで動く技術だ。

AIの活用にも年収差が明確だ。「最初の行動を起こすためにAIを使っている」と答えた割合は、年収1500万円以上では約40%と500万円未満の倍以上に跳ね上がる。企画の骨子やメールの下書きをAIに出させるだけでも最初の一歩は軽くなる。高年収層はその効果をすでに実感している。

【図表】年収1500万円超はAIやToDoリストで「すぐやる」を仕組み化

すべてを早くやるよりもやるべきことを見極める

興味深いのは、年収1500万円を境にして「すぐやる」の質が変化する点である。「企画書や報告書は、完璧を目指すより早めに出す」の肯定率は、年収1000万円以上1500万円未満の層で約69%とピークを迎え、年収1500万円以上では約66%にやや下がる。「情報が不十分でもすぐ決める」の即断率も同様の傾向を見せ、年収1000万円以上1500万円未満の約57%に対し年収1500万円以上では約54%とわずかに下がる。年収が上がるにつれて求められるアウトプットの質も上がり、精度が重視されるフェーズに入るのだろう。「60点で早く出す」は万能ではなく、ステージによって最適解が変わることを物語るデータだ。

これらの結果から、年収1500万円以上の層が「すべてを早くやる」のではなく、取り組む案件そのものを厳選する姿が浮かび上がる。手当たり次第に即断するのではなく、やるべき仕事を見極めたうえで判断を下す。高年収層の行動は、速さの「量」から「質」へと転換している。

【図表】行動編2:見極める 「60点で早く出す」が正解なのは年収1000万円まで

先に見たように、年収が上がるほどAIを初動に使っていたが、「資料や文章を作成する際、必ず過去のフォーマットやAIを使って『型』から入る」の肯定率も興味深い。年収1000万円以上1500万円未満の約64%がピークで、1500万円以上では約49%まで低下した。1500万円以上では定型に収まらない独自の判断と視点が求められるのだろう。高年収層はAIを使わないのではなく、使いどころを選んでいるのだ。こうした「選ぶ」姿勢は時間の使い方にも表れる。

年収1500万円以上の層は、業務後に予定を入れる割合が約57%と半数以上を占める。一つの業務にかける時間を厳密に決めるよりも、業務が終わった後の予定を入れることで、仕事に区切りをつけるスタイルが目立つ。

徹底して「やらない」と決めている習慣も特徴的だ。仕事面では全年収層で「連絡の放置」をしないと「ダラダラと残業をする」をやらない意識が高い。特筆すべきは、高年収層のほうが「自分で抱え込む」をしないと徹底していること。自分のリソースの限界を理解しているからこそ、人に任せることを徹底できるのだろう。日常面では「運動不足の放置」をしないと決めている割合が年収1500万円以上で約35%に対し500万円未満では約23%。「散らかった部屋やデスクの放置」も年収1500万円以上が約29%で、500万円未満を上回る。高年収層ほど「やめること」を明確にして長期の視点で得られるものと失うものを見極め、仕事と身体で限られた自己資本を守っているのだ。

(構成=本誌編集部 図版作成=大橋昭一)