スマホの使いすぎをやめるにはどうすればいいのか。ポイントは「意志の力」に頼らないことだ。精神科医でスマホ依存に詳しい樋口進医師は「自分で決めた小さなルールだけが効く。まずは10分離れて」と言う――。
夜間にスマホを使用する人の手
写真=iStock.com/Yuliya Taba
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「使わない時間帯」を少しずつ積み重ねる

スマートフォンの依存は厄介です。スマホはいつでも、どこでも使えるし、用途が多様です。決済や重要な連絡のツールといったエッセンシャル(生活に不可欠)な機能と、非エッセンシャルな機能が混在していますから、「一切使わない」わけにはいきません。また、依存の問題だけでなく、誹謗中傷や情報漏えいといったシリアスなトラブルも。スマホが抱える問題は、本当に複雑化しています。

特に、ショート動画を眺める、あるいは誰かからの反応を「待つ」状態が続くSNSやオンラインゲームは、脳を常に緊張させ、依存性を高めます。次から次へと流れてくる短い動画をスクロールし続けるシステムは、本人の興味をアルゴリズムが学習し、逃れられない「アリ地獄」のようにユーザーを惹きつけ続けます。

依存治療で最も大事なのは、「利用時間を減らす」ことではなく、「スマホが使えない時間帯をどうつくっていくか」という考え方です。

私たちはまず、「終わる時間」だけを一つ決めてもらいます。最低限ここだけは守るというルールをまず一つ設定しておいて、そこから「スマホを使えない時間帯」をどうつくっていくかを考えるわけです。

東京から来た20代の専門職の男性は、「X(旧Twitter)」の利用時間が非常に長く、最近は対話型AI「Grok」も多用していて、そこから離れられないことに危機感を感じていました。

彼と一緒に考えたのは、「一日の中で、スマホを使わずに済む時間はないか」ということでした。彼はまず「通勤時間はスマホを見ずに紙の本を読む」ことを考え出しました。私はそこでもう一つ、短い時間でいいからスマホから離れる時間はないだろうかと考えてヒアリングを続け、「ランチタイムにはスマホをオフィスのデスクにしまったまま、外へ散歩に出るのはどうか」と提案しました。

一日のうち少しでも使用時間を減らせた、使わない時間帯をつくれたという事実の積み重ねは大きい。彼は今、短い時間でも区切りを決め、「ここは使わない」という聖域を持つことで、仕事中の集中力が変わったと話しています。

「プライド」が働くと守れる確率が上がる

スマホは手元にあると絶対に触ってしまいます。触らない時間帯を決めたら、その間は物理的に自分と離れたところに置くこと。中途半端ではなく、「まったく使わない時間」を一定期間設ける工夫が大切です。「自分は意志が弱い」と嘆く方がおられますが、人間の意志はそれほど強くない。物理的に手元にないという環境をつくってしまえば、成功率は格段に上がります。

私はいつも制限を強要するのではなく、まず何ができるかを本人に考えてもらうようにしています。タイマーやペアレンタルコントロールでスマホの機能に縛りをかけても、結局は本人が我慢できずに外してしまいますから。

そこで、「あなたが主体的に考えない限り無理。何ができますか」と問いかけ、本人から「作業中は手の届かぬ場所に置く」「寝室には持ち込まない」といったアイデアが出るのを待ちます。自分で決めたという「プライド」が働くと、守れる確率が飛躍的に上がります。本人の自己肯定感が上がり、さらに使用時間が減るという「よいサイクル」が生まれるわけです。

(構成=西川修一)