細胞内の働きで恩恵にあずかろう
老化とは「細胞のやつれ」だから少しずつ交換する
人の体は何でできている? そう聞かれたら、みなさんは何と答えるでしょう。「皮膚」と答える人がいるかもしれない。「内臓」と答える人もいるでしょう。でも正解は……細胞なのです。人の体は37兆個もの細胞からつくられていて、その一つ一つが生きていて、皮膚や骨をつくっているのです。
大阪大学名誉教授。オートファジーの研究でノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典氏が、国立基礎生物学研究所にラボを立ち上げたときに、助教授として参加。『私たちは意外に近いうちに老いなくなる』(日経BP)など著書多数。
人が健康というときは、細胞の状態が正常だという意味。逆に病気や老化も、すべて細胞で起こります。細胞が機能しなくなることで、体調が悪くなり、時には死に至ることもあります。みなさん案外ご存じないので、まずは人にとって何より細胞が大事だというポイントを最初に伝えておきました。
さて本題です。私が研究しているオートファジーも、まさしく細胞内で日々起こっている仕組みです。オートファジーとは、ギリシャ語の「auto(自己)」「phagy(食べる)」に由来する言葉。日本語では「自食作用」と呼ばれ、37兆個の細胞一つ一つが自分を食べることで行っているメンテナンス機能のことをいいます。
これには大きく、2つの役割があります。一つは細胞のリサイクル(新陳代謝)です。オートファジーでは、細胞内のタンパク質などの成分を1日に1〜2%ほどを分解し、再利用するのです。一般に新陳代謝といえば、古い細胞が死んで新しい細胞に入れ替わることを指しますが、こちらの場合は、細胞が生きている間に中身が入れ替わっていくところが違います。
私はよくこれを車にたとえます。あちこちにガタがきている古い車だったとしても、毎日部品を少しずつ新しいものと交換していったら、数十日で新車とほぼ同じ働きをするようになります。オートファジーでは、それと近いことを細胞内で行っているのです。
もう一つの役割は、細胞の中に入ってきた有害なもの、例えばウイルスや菌など病気の原因になるような敵を除去する作用(隔離除去)です。つまり免疫システムとしても働いています。通常、こうした病原体の除去は免疫細胞が行うのですが、個々の細胞も自分で自分の身を守っているのです。
オートファジーはウイルスや菌のみならず、壊れたミトコンドリアや壊れたリソソームなども除去します。これらは壊れると中から有害物質が漏れてくるので危険だからです。アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患は、脳の細胞の中にタンパク質の塊が溜まって細胞が死ぬことで引き起こされます。オートファジーはそうしたタンパク質の塊も排除するので、これらの病気の予防にも関わっているのです。
またこうした機能から、オートファジーが老化に関係していることもわかってきました。例えばアルツハイマー病は高齢者に多い。若いうちはオートファジーがちゃんと機能しているので、なる人が少ないとも考えられます。老化の理由は、決して1つではないですが、オートファジーが年齢とともに低下して、細胞内部の新陳代謝や細胞の中の有害なものの除去ができなくなることが、老化の主要因の一つと考えられるようになりました。
オートファジーが低下すると、病気になりやすくなります。さまざまな病気になりやすくなることは、老化の最大の特徴です。
「16時間断食」に明確な根拠はない
反対にオートファジーの働きが活発になれば、細胞は若返り、老化防止や病気予防にも役立ちます。我々の研究でわかったことですが、動物実験ではオートファジーを活性化させることで、寿命が1.2倍にも延びました。
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