週6日は和朝食で魚・豆・野菜をとる
私は1932年生まれの93歳で、6月に94歳になります。66歳から日本栄養大学(旧・女子栄養大学)の副学長を務めており、現在も週に2〜3回、自宅のある栃木県から埼玉県坂戸市のキャンパスまで、往復4時間かけて通っています。講義をしたり、会議に参加したりするほか、昨年は実験をまとめて3本の英語の論文を書き上げました。現在も執筆を続けています。
この年になっても元気に働けているのは、栄養学の知識を生かし、健康によい食事を長年、実践してきたからだと自負しています。とりわけ重視しているのが朝食です。朝食は寝ている体と脳を目覚めさせるエネルギー源であり、学業成績や仕事のパフォーマンスに直結するものだからです。
私の朝食は、週6日が和食。主食は白米ではなく、胚芽米と、葉酸を添加した葉酸米です。これに味噌汁と納豆、魚や卵、野菜のおかずを合わせます。
週1回の洋食は、オートミールが主食です。一般の人にはなじみが薄いかもしれませんが、私は好きです。水を入れて電子レンジで温めるだけで調理でき、日本人に不足しがちな食物繊維がたっぷりとれます。おかずは卵とベーコン、チーズ、トマトやブロッコリーのサラダ。飲み物は和洋を問わず、ホットミルクと野菜ジュースです。
栄養バランスの考え方は、女子栄養大学創立者である母・香川綾が考案した「四群点数法(食品を栄養素の特徴で4つのグループに分け、1点=80キロカロリーの「点数」を用いてバランスよく食事をとる方法)が基本です。ただ毎食、点数を計算するのは大変なので、シンプルに「1日に魚100グラム、豆類・大豆製品100グラム、野菜400グラムをとる」ことを目標にしています。朝食で魚がとれなければ昼食や夕食で補う、不足しがちな野菜は野菜ジュースで補うなど、1日の中で調整します。
私の朝食を見て「朝からこんなにたくさん食べるのですか」と驚く人もいます。多忙なビジネスパーソンの中には「朝食はパンとコーヒーだけ、昼食はほどほど、夕食にドカンと食べる」という人も多いでしょう。しかし、健康を考えると、3食の量的なバランスは1:1:1が望ましいのです。
特に、魚や卵などのたんぱく質は3食で均等に配分し、どれか1食に偏らせないことが大切です。食べたものを消化吸収する機能や、アミノ酸から筋肉や臓器、ホルモンなどを合成する「同化能力」は、加齢とともに低下していきます。そのため、1食で大量にたんぱく質をとっても、体内で利用しきれず排出されてしまうのです。それが筋肉量の減少にもつながるため、私は3食すべてでたんぱく質をしっかりとるように意識しています。
遺伝的に不足しがちな葉酸とDHAを重視
私の食事の栄養学的な特徴は「1日に葉酸400マイクログラム、DHA(ドコサヘキサエン酸)1グラムをとる」という点です。「葉酸」はビタミンB群の一つで、赤血球の生成やDNAの合成に欠かせない重要な栄養素です。葉酸が不足すると、胎児の神経管閉鎖障害を引き起こすほか、血管を傷つける血中物質「ホモシステイン」が増え、脳梗塞や心筋梗塞などの心血管系疾患のリスクが高まります。また、脳の神経伝達物質の代謝にも悪影響を及ぼし、認知症やうつ病のリスクも上昇します。
しかし、日本人の約6割は遺伝的に葉酸の利用率が低く、葉酸を体内で効率的に利用することができません。葉酸利用率が最も低い遺伝子型(TT型)の人は、葉酸の利用率が高い遺伝子型(CC型)の人に比べて、脳梗塞の発症リスクが3倍以上も高いことがわかっています。
ただし、TT型の人でも、1日400マイクログラムの葉酸をとれば問題ありません。葉酸はホウレンソウや海苔、緑茶などに多く含まれますが、毎日400マイクログラムとるのは難しいため、私は前述した葉酸米を活用しています。うちの大学がメーカーと共同開発したもので、炊飯時に混ぜて炊くだけで手軽に葉酸を補給できます。
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