【鉄則1】目標量で見ると日本人のたんぱく質摂取量は全然足りていない

「推奨量で安心」が大間違いである理由

皆さんは毎日、どの程度のたんぱく質を摂っていますか。「そこそこ食べている」と思った方も、残念ながらその量では足りていないかもしれません。

上月正博(こうづき・まさひろ)
上月正博(こうづき・まさひろ)東北大学名誉教授、山形県立保健医療大学理事長・学長。日本腎臓リハビリテーション学会理事長、国際腎臓リハビリテーション学会理事長、日本リハビリテーション医学会副理事長、日本心臓リハビリテーション学会理事などを歴任。『食べてやせる! 若返る! 病気を防ぐ! たんぱく質・プロテイン医学部教授が教える最高のとり方大全』(文響社)など多数。

最近の「プロテインブーム」で、たんぱく質に注目が集まっていることをご存じでしょう。「たんぱく質が健康に欠かせない栄養」という認識が広まり、いまや若い男性ばかりでなく、女性も中高年も、たんぱく質を積極的に摂るようになったことは、好ましい傾向だと考えています。とはいえ、現状では日本人の多くが理解不足で、「たんぱく質の摂り方を間違えている」と言わざるをえません。

私は腎臓病の専門医ですが、並行して長年、たんぱく質の研究も進めてきました。たんぱく質のコントロールが、腎臓病の治療や予防に欠かせないからです。その結果、たんぱく質は「誰が何の目的でいつ、どんな食品や食事法で摂るか」によって、健康効果が大きく変化することに気づきました。

たんぱく質の摂取量は、少なすぎても、多すぎても健康にマイナス効果をもたらします。その人にとっての「適量」でなければなりません。厚生労働省がまとめた「食事摂取基準」は、日本人にとっての、いわば「栄養摂取の指針」と言ってもいいでしょう。その中で、たんぱく質の1日当たり摂取量については、「推奨量」と「目標量(エネルギー比率)」があります。推奨量は最低限の量で、目標量が本当に健康でいるための数値です。しかし、目標量はエネルギー摂取量に対する割合で示され、ややわかりにくいことも影響して、大半の人が「推奨量を摂れば十分」と誤解しています。

2025年版のたんぱく質摂取の1日当たり推奨量では18〜64歳の男性が65グラム、65歳以上の男性が60グラム、18歳以上の女性が50グラム。厚労省によれば、19年のたんぱく質の1日当たり平均摂取量は約70グラム。したがって、推奨量はクリアしているようです。

ところが、カロリー計算に基づいてたんぱく質摂取の目標量を割り出すと、推奨量では全然足りません。例えば、1日のエネルギー必要量が2600キロカロリーである50歳男性の場合、たんぱく質摂取の1日当たり目標量は、91〜130グラムという結果になります。上限値で見れば、推奨量の約2倍のたんぱく質を摂らなければならないことになります。つまり、たいていの日本人は、本当に必要な量のたんぱく質が足りていないのです。

とりわけ、高齢者は要注意。「年を取ったら、たんぱく質を食べる量は少なくていい」と、誤解している人も少なくないのですが、若い人よりも消化能力が衰えて、栄養の吸収率が低下するため、意識してたんぱく質を多めに摂らなければなりません。

たんぱく質摂取の推奨量と目標量について説明しましたが、ほかにも、「たんぱく質不足」を、自分でチェックできる方法があります。たんぱく質といえば、「筋肉の原料」というイメージが強いのですが、実は、皮膚や髪、骨の成分であるコラーゲン、セロトニンやドーパミンといった神経伝達物質、ホルモンなどの原料でもあります。そのため、たんぱく質が欠乏すれば、筋肉が弱くなるだけでなく、肌が荒れたり、髪が傷んだり、睡眠の質が悪くなったり、免疫が低下したりする可能性が大きいわけです。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2026年5月15日号)の一部を再編集したものです。

(構成=野澤正毅 写真=本人提供)