夕食から朝食の空白が筋肉を壊しやすい時間
たんぱく質の摂取では、量だけでなく、タイミングもとても重要です。タイミングを間違えると、たんぱく質をいくら大量に摂っても、「筋肉や肌、髪が蘇らない」事態も起こりえます。
私たちの体内では、さまざまな器官で絶えず新陳代謝が行われています。主にたんぱく質でできている筋肉も、例外ではありません。筋肉組織では、筋肉を合成する「たんぱく同化」という作用と、筋肉を分解する「たんぱく異化」という作用が、同時進行しています。2つの作用のバランスが取れていれば、筋肉は減ることなく、新しく生まれ変わるというわけです。
食事によって、たんぱく質が体内に豊富に供給されている状態であれば、たんぱく同化も活発に行われます。しかし、食事をしない時間が長くなればたんぱく質の供給量も減っていくので、たんぱく同化の作用は低下します。そうなると、バランスが崩れて、たんぱく異化の作用が相対的に優勢になり、筋肉が減る一方になってしまうのです。たんぱく質をコンスタントに摂らなければならない理由が、おわかりいただけたでしょう。
とりわけ、気を付けたいのが朝。例えば、午後7時に夕食を摂って午後11時に床に就き、翌朝の午前6時に起床して、午前7時に朝食を摂るパターンが、普通の食生活だとしましょう。その場合、前日の夕食から翌日の朝食まで、何も食べないブランクが12時間もあります。その間、たんぱく質は一切補充されないので、夜から翌朝にかけては、筋肉が最も壊れやすい時間帯と言えるでしょう。筋肉量をキープしたいのなら、朝食でたんぱく質を摂り、たんぱく同化を促進するのが、マストということがわかります。
ところが、多忙な現役世代の中には、「朝食抜き」という人が珍しくありません。そうした場合、事態はさらに深刻になります。昼食を午後1時に摂るとすると、食事のブランクが18時間に延長されます。そうすると、体内では「飢餓状態」が続くことになるので、筋肉を分解するように脳が指令を出して、たんぱく質を体のエネルギーに変えてしまうのです。
とはいえ、「朝は何も食べなくても、夜は肉などをガッツリ食べて、たんぱく質もたっぷり補給しているから、1日に必要な量は賄えるはず」と、軽く考えている人がいるかもしれません。しかし、残念ながら、そう簡単にはいきません。なぜなら、一度の食事で体が吸収できるたんぱく質の量には、限度があるからです。たんぱく質として体内で代謝できるのは、最大で約30グラム。それを上回るたんぱく質は、体内に脂肪として蓄積されるか、肝臓や腎臓で尿素として分解され、体外に排泄されてしまうのです。
つまり、焼き肉食べ放題でたんぱく質をまとめ摂り、と考える人もいるかもしれませんが、たんぱく質として吸収されるのは約30グラムにすぎず、残りは「無駄なカロリー」になりかねないのです。なお、夕食でたんぱく質を食べすぎると、エネルギー消費が低下する就寝中に、脂肪に転換されやすいので、夜の食事量は控えめにしましょう。
【鉄則1】の記事で、50歳男性のたんぱく質摂取の1日当たり目標量として、91〜130グラムという例を提示しました。朝昼晩の三食を欠かさず、毎食30グラムずつのたんぱく質を食事に取り入れ、たんぱく質が豊富な間食などを追加すれば、目標値はほぼ達成できるのです。つまり、それが、たんぱく質を摂取する「ベストのタイミング」ということ。たんぱく質の「ドカ食い」は、意味がありません。とりわけ、現役世代こそ、「朝のたんぱく質」の確保を最優先するように意識してみてください。
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2026年5月15日号)の一部を再編集したものです。
ここから先は有料会員限定です。
登録すると今すぐ全文と関連記事が読めます。
- 広告最小化で快適な閲覧
- 雑誌『プレジデント』が最新号から読み放題
- ビジネスに役立つ学びの動画が見放題
- 会員限定オンラインイベント



