丁寧で長いメールに潜むアリバイ作りの心理

あなたのメールが長いのは、文章力の問題ではありません。グーグルでの人材開発をはじめ、長年一流のビジネスパーソンを見てきた経験から断言します。メールを長くしているのは「自己防衛」と「責任回避」です。

後からそのメールが上司に転送されたとき、トラブルが起きて過去のやり取りが監査されたとき、「自分は悪くない」と証明できるように、丁寧な表現で詳細を書き連ねる。こうした行動が、意識的にせよ無意識にせよ起きています。

その結果として現れる典型的なパターンが3つあります。

1つ目は、論点・次のアクション・責任の所在が不明確なメール。受け手が読み終えても「で、私はどうすればいいの?」となってしまう。何かを伝えているようで、実際には何も決めていません。

2つ目は、不必要に多くの人をCCに加えるメール。「私はちゃんとやっています」というアリバイを作るため、関係のない人まで巻き込む。CCが増えるほど全員の時間が奪われ、仕事全体のスピードが落ちていきます。

そして3つ目は、感情を乗せたメール。「私はこう感じました」「これは不公平だと思います」。たとえ意見が正当でも、複数人がCCされたメールでこれを送れば、受け手を困惑させ、問題をこじれさせるだけです。

身に覚えがある人は多いのではないでしょうか。上司へのメールは長いのに、上司から返ってくるメールは短い。あの差は能力の差ではありません。立場の差です。上司には決裁権がある。「これでいく」と書けばそれが結論になり、メールも短くて済む。ところが部下は、情報が足りなければ判断が覆るかもしれない、評価を下げられるかもしれないと不安になる。だから経緯を説明し、選択肢を列挙し、「念のため」の一文も付け加える。立場が弱い人間が自分の身を守ろうとすると、文章は必然的に長くなるのです。

こうした傾向は、役割やゴールが明確でない組織ほど強くなります。何をすべきか、いつまでにどんな成果を出すべきかがはっきりしていなければ、メンバーは言葉でリスクを埋めようとする。結果、メールはどんどん長くなる。個人の問題だと片づけるのは簡単ですが、実態は組織の曖昧さが引き起こしている構造的な問題です。

特に注意してほしいのは、「丁寧な文面のメール」です。「お忙しいところ恐れ入りますが、ご確認いただけますと幸いです」。一見、礼儀正しい一文ですが、この定型句の裏には「私はちゃんと依頼しましたからね」「確認しなかったのはあなたの責任ですよ」というアリバイ作りが潜んでいる。丁寧さとは、人間関係が良好な証拠ではありません。問題を覆い隠す隠れ蓑にもなりうる。組織の中で丁寧なメールばかりが飛び交っているとしたら、それは組織の不健全さが文章に滲み出ているサインかもしれません。

答えられない質問に優秀な人はどう答えるか

メールが長い原因がわかったところで、次は「短い人」の話をしましょう。

(構成=本誌編集部)