「2025年に火星に移住できる」という募集に20万人が殺到。NASAも2050年に火星移住を始めるという。いまや夢物語ではない「火星移住」、予算はいくらくらいなのだろうか?

40年後に火星で自給自足生活が実現!?

「火星格安物件!」「地球から宇宙船でたった80日!」「宇宙ステーションまで宇宙服で徒歩5分」「火星第一中学区」「価格は」……。

こんな広告が流れそうな勢いで、「火星移住計画」が進んでいる。なるほど夢がある……ではなく、火星への移住はここ数十年で実現される予定の構想だ。2016年10月、オバマ氏が大統領在任中にCNNのインタビューにこんな風に答えていた。

「2030年代までに火星に人類を送り、無事に地球に帰還させ、徐々に火星に残れるようにする」

NASAは「早ければ2050年代に火星への移住を目指している」とし、さらには「トランプ大統領に配慮してNASAが有人飛行を早める」という一部報道も見られるなど、火星移住計画はもはや夢物語ではない。

ニューヨークタイムズでは今年、NASAの飛行士6名が8か月間ハワイの人里離れた岩場での火星探索を想定した生活訓練をする映像を流している。訓練のため、ハワイといえども外出時は必ず宇宙服着用だ。そして、米スペースX社の創設者であるイーロン・マスク氏は「火星に居住地を建設する」と発表した。

マスク氏によると、地球と近隣の惑星との間で数千人を輸送する計画を、十数年以内に開始するという。およそ40年から100年後には自給自足ができるようになり、100万人が暮らす居住地を作る予定だそうだ。もし、私たちが子供の頃から思い描いてきた「ワレワレハ火星人ダ」が実在するなら、彼らと同じ星の同居人となるかもしれないのだ。

だが、どうして地球を出る必要があるのだろうか?

火星に移住するのは、人類が絶滅しないため

「人類の未来は2つに1つ。多惑星に生きる種になって宇宙を飛び回る文明人になるか、ひとつの惑星にしがみついたまま、何らかの惨事を経て絶滅に至るかです」。ナショナルジオグラフィックのインタビューに、マスク氏はこう答えている。

かつて、恐竜たちは巨大隕石の落下によって滅びたという説がある。映画みたいな話ながら、たとえば直径1kmの巨大隕石が落ちれば大災害になる。隕石が地球にぶつかる頻度について、東北大学の後藤和久氏は「今から約6500万年前の白亜紀/第三紀(K/T)境界に衝突した天体は直径約10kmです。この規模の天体が地球に衝突する頻度は1億年に1回ほどと極めて稀ですが,ひとたび衝突が起きれば地球規模の大災害が発生します」と日本地質学会のサイトに記している(http://www.geosociety.jp/faq/content0002.html)。

私たちが生きている間にこの規模の衝突が起きる確率は低いものの、46億年の地球の歴史の中では、“頻繁に”こうした巨大な衝突が起きているそうだ。ほかにも、地球温暖化による異常気象、生態系や食糧生産の乱れ、核戦争、SARSやエボラ出血熱のような伝染病、氷河期……地球に起こりうる惨事は数えだせばキリがない。火星に移住するのは、惨事に備えた人類の“種の保存”のためだ。

では、なぜ“火星”なのだろうか?