新入社員を迎える季節だ。今年はどんな若者が入社してくるのか。東大の教壇に立つ経営学者の舟津昌平氏は「かつての大学では、教職員から生徒に対する言動が問題となっていた。しかし最近は生徒からのハラスメントも問題化している。大学で起きている異変は、新入社員を受け入れる企業側にとって参考になるかもしれない」という――。
腰に手を当ててポーズをとっている男女
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変化する「大学でのハラスメント」

「ハラスメント」という概念が普及して久しい。その類型は増えるばかりで、日々大喜利のように新たなハラスメントが生み出され、「ハラスメント・ハラスメント」みたいな言葉すら生まれつつある。世にハラスメントの種は尽きまじ。

先に断っておくと、筆者はやたらめったら「ハラスメント」とラベリングして喧伝することには反対である。ハラスメント認定を濫用することはコミュニケーションの萎縮を生み、さらに真に問題視されるべきハラスメントを矮小化し、埋もれさせてしまうからだ。

ハラスメントを問題化する本旨は「本来守りたかった対象を守ること」にある、と強調しておきたい。

さて、今回のテーマは「大学とハラスメント」である。大学に特有の「アカデミックハラスメント」は、たとえばこんな話になる。

・「○○しないと卒論の単位は出さない」と、教授から卒論と無関係のことを強要された
・何かが気に食わなかったようで、教授から突然「あなたの指導は放棄する」と言われた
・研究室で無償の労働を迫られ、本来支払われるべきバイト代は研究室に回収された

アカデミックハラスメントの要件は、ざっくり言えば「教職員と学生などの権力差をもって」「事前に合意されていない基準をもちだしたり、過度なコミットメントを求めたりするなどして」「教育目的(つまり、本来の業務内)とは思えない範囲での関係において」「本義でない不利益を学生側に与えること」とでもなるだろうか。

新語「キャンパスハラスメント」も登場

なお、「キャンパスハラスメント」という言葉も見受けられるようになった。キャンパスにおけるパワハラやセクハラを含む包括的な概念とのことで、アカハラも含まれるようだが、総称する意味はあまり感じられない。新語の乱造には注意が必要だ。

【Close-up:それ「ハラスメント」ですよ】
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眉をひそめるような話が旧態依然とした大学にはごまんとあったわけで、それはなくなってしかるべきだ。ただ、それを解決するための手段として、今の「ハラスメント」防止体制は妥当なのだろうか、と疑問に思えてならない。

上に述べたアカハラの要件はそれなりに妥当なものだと思うが、運用しやすくはないかもしれない。個々の事案がハラスメント認定されるべきかは、個々の文脈をふまえないと判断できないことも多いからだ。