「こっちは学費を払っているんだぞ」と主張
結局、大学組織が「イヤなことのお引き受け先」であれるかは微妙であって、できないことも多い。
さきほど登場した「学生部」は、企業でいう総務部に近く、なんでも屋でありつつ、組織によって主な仕事が異なる。大学がハラスメント相談窓口を設けていることも多いが、それが学生部であるとは限らない。
ところがSNSでご活躍の学生たちの中では「ムカついたら学生部に言っとけ」という話になっているようなのだ。結果的に、「それをこっちに言われても……」となる話がたくさん回ってくることになる。
無理筋事案に難色を示すと「こっちは学費を払っているんだぞ」というきわめて乱暴な言葉が投げられることもある。
払ってんのは君じゃなくて君の保護者だろ、というのはおいといて、「そんな対応をしてほしかったらもっと学費を払ってください。今の学費にそのようなサービス料は含まれていません」と返すしかない、と思っている。嫌な言い方ではあるのだが、そっちがそう言うならこう返すしかない、という答えである。
実際に、アメリカなどに比して日本の学費は格段に安い。そうしたサービス料を含んでいないからでもある。
大学教職員とてボランティア(無償)でやっているわけではなく、「それは私の仕事ではない」と明確に断ることは許されている。引き受け先が曖昧であるという意味でも、大学生にとってイヤなことがあればすべてがアカデミックハラスメントになるわけでもない。
もはや「カスハラ」に近い学生の言動
この手の話は、大学にはいくらでも溢れている。
「マジか。スマホに書いてたレポート、全部消えたわ」
と、SNSでつぶやいた学生さん。自分の不注意でしかないはずだが、次々と、担当教員への罵詈雑言が続く。
「マジむかつくわ。全部あいつのせいや」
「自己満みたいなしょうもない問題出しやがって」
「だいたい学生はバイトで忙しいんだから、それくらい考慮して課題出せよ……」
と、連綿とした中傷を続けた後、こうつぶやくのだ。
「友達に聞いたら、レポート出したら単位は出るらしい。先生が急に神に見えてきた」
これらはあくまで極端な例であり、「モンスター顧客」に近い。「カスハラ」に該当する程度の学生も、(学生を客とみなすなら)当然いるのだ。
それは極端な例でしょう、あなたは特殊な事例を過度に一般化している……なんて話ではない。
こうした例の何が問題なのかというと、「レモンの原理(注)」というやつで、無理筋の不満をハラスメントだので正当化させて、公の場で喧伝するような学生が増えてしまうと、本当に聞くべき声を聞けなくなってしまう。教職員の時間は無限ではなく、増加する相談のすべてを丁寧に聞けはしないからだ。うんざりするような相談ばかり受けていたら、オープンな心を閉ざす警戒心も生まれてしまう。
注:ミクロ経済学の理論。情報の非対称性(売り手と買い手の情報格差)により、質の悪い商品(レモン)ばかりが市場に出回り、優良な商品が姿を消してしまうこと。

