「学生部に言えばいいよ」という先輩たち

4月、入学の季節になると、SNSには「春から○○」なるタグが出現し、新入生は「友達ネットワーク」づくりに励む。イマドキ学生は実際に顔を合わせる前に「友達候補」をSNSで見繕っておく習性があるのだ。

その新入生アカウントに熱心に絡んでいるアカウントがある。サークル勧誘アカウントである。お役立ち情報やらなんやら、善意でお助けしますよ、という顔をしつつ、なんやかんやであわよくば入部に持ち込むことをワンチャン狙うアカウントである。

こんな話があったと同業者の先生から聞いた。

ある1年生がSNSでつぶやく。

「○○先生、テストの日に欠席したらもう単位出ないって……」

先に断っておくと、こうした情報はいわゆるシラバスや講義のイントロダクションで事前に予告されているので、「聞いていなかったのはあなたでは」という事案ではある。訴えられても、大学側としても「ルールですよ」としか言いようがない。

アカデミックなことをめぐって学生に不利益が発生しているわけだが、これがアカハラになるわけがない。

そんな無理筋事案に、親切アカウントは答えるのである。

「そういうのは学生部に言ったらいいと思いますよー」

どうやら、一部の学生の間では「なんか困ったことがあったら学生部に全部言え」となっているそうなのだ。

東大・赤門
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“ハラスメントの種”を引き受けるのは誰か

ハラスメントめいた事案が発生したとき、それを誰が引き受けるべきなのかは難しい問題である。

かつて筆者は、留学生支援室というところで「チューター」のアルバイトをしていた。留学生の困りごとに対応するオフィスである。「サークルに入りたいが日本語ができない学生を受け入れているか聞いてほしい」とか、履修の相談とか、学生生活に関する幅広い相談を受け入れていた。

ある日、留学生が深刻そうな顔で相談に来た。アルバイト先でハラスメントめいたことが起きていて、悩んでいるのだという。とりあえず話を聞く。

その後、教員とのミーティングでその話をした。相談員であるチューターは自分の担当案件を報告しないといけないのである。留学生担当の先生は私の話を神妙に聞いてくれたあと、困ったように返してきた。

「……それ、アルバイト先の話ですよね? 大学が何か対応できる話ではないんじゃないかと……」

あ、ほんとですね……と返すしかなかった。留学生が訴えた窮状が事実であったとしても、バイト先に「すみません、留学生支援室ですが……」と問い合わせるのも、それはそれでおかしい。

その留学生には、「いよいよ困ったら、もう一度来るかメールしてください」と返したのだが、結局二度目の来訪はなかった。無事に解決したのか、留学生支援室に聞いても無駄だと思ったのかは定かではない。

むろん、支援室がバイト先と交渉してはいけないわけではない。日本語の苦手な留学生が不動産屋と揉めているので、ついていって通訳しつつ交渉を助ける、みたいなこともあった。ただ、そういった逸脱は決して望ましくはないし、美談でもないと思う。