プレジデント誌の対談連載「弘兼憲史の『日本のキーマン解剖』」。今回のゲストは伊藤忠商事の小林栄三会長です。日本独自の総合商社は「生まれついての"BtoB"」。しかし、「川中」で手数料を取るだけの存在であれば、「要らない」といわれるようになりました。総合商社はどうやって"不要論"を乗り越えたのか。小林会長に聞きました――。
TPPアメリカ離脱「寂しいことです」
【弘兼】伊藤忠商事の会長だけでなく日本貿易会会長も務められています。そこではどういった活動をしているのですか?
【小林】貿易に関わる60以上の企業・団体の意見を取りまとめて、政府や関係機関に提言します。たとえば税制はこうあるべきだ、あるいは貿易協定や人材育成はこうしてほしいなどという内容をまとめ、場合によっては官邸に持って行ったり、関係省庁に働きかけたりしています。
【弘兼】TPP(環太平洋経済連携協定)については今後どう考えていますか。
【小林】経済規模という観点から考えるとアメリカがいないのは寂しいことです。ただそれでもTPPのようなコンセプトは必要だと思います。今、世の中は保護貿易主義に傾いていますが、各国の経済が発展していくためには貿易・投資の自由化を進めることは大事なことです。
【弘兼】この連載では様々な業界のリーダーに登場いただいていますが、実は商社は小林さんが初めて。
【小林】(微笑みながら)商社が何をやっているのか、外から見ているとわからないでしょう?
【弘兼】そうなんですよ。昔は輸出入に関わる仕事というイメージでしたが、今はコンビニやインフラなど、様々な分野で名前を聞きます。