家族と行く夏休み旅行や帰省。「旅行の計画段階」「車窓から見える風景」「買い物」「食事」……漫然としないで、子どもの学びにつなげていくことができると塾講師の筆者は語る。その具体的な方法とは?

子どもの頭がよくなる夏休み旅行術とは?

もうすぐ夏休みです。読者の皆さんはもう家族旅行の計画を立てただろうか。

ご存じの通り、夏休み期間の旅行代金はお盆期間を中心に利用者が増える影響で高くなる。宿泊費にしろ、移動費にしろ。まあ、それでもしかたないか、と思って予約した経験がある人は多いだろう。せっかくお金と時間を費やすのだから、その経験・体験を子どもと共有したい。

まず、下の中学入試問題を見てほしい。学習院女子中等科の入試問題(2010年)である。

≪ホテルの宿泊料金について、土曜日の宿泊料金が、ほかの曜日の宿泊料金よりも高くなっている理由を説明しなさい
▼ホテルの宿泊料金(1泊2食付き、1名料金)
・月曜日~金曜日の宿泊料金:9,800円
・土曜日の宿泊料金:11,800円≫

大人であればわかることを、小学生や中学生が考えられるかどうかが試される。今回の問題、小学生や中学生であれば「たくさんの人が泊まるときに値段を高くすると利益を得やすいから」と答えられればいい。理想としては「土日が休日である人が多いため、需要が高まる週末に料金を高くしても宿泊する人は多く、利益を上げやすいから」という解答になる。要は、「ホテル側は利益を最大化するために、工夫をしている」といった視点があればよい。

子どもに「大人の常識」をそれとなく教える

かつての知識偏重型から、思考力重視に教育の質が変わっていく中でどんな能力が受験で問われるのかというと、究極的に言うと「大人の常識」ということになる。何も中学入試だけではない。山口県の公立高校入試でも次のような問題(2016年)が出題されている。

≪次の【表I】は、新聞の広告に掲載されていた、あるホテルの宿泊料金表である。多くのホテルが、曜日によって異なる宿泊料金を設定する理由を、「ホテルの部屋の数(供給量)は一定であるのに対し、」という書き出しに続けて、簡潔に述べなさい。
【表I】
月、火、水、木:6,980円
日、金:7,980円
土:11,980円≫

2020年の大学入試改革で「記述式問題が増える」「分析型の問題が増える」と言われているが、すでに中学入試や公立高校入試ではこのタイプの問題は出題されている。こうした流れからみても、今、子どもに身に付けさせたいのは、「大人の常識」と「資料の活用力」を組み合わせた能力。私はこれを「現場思考力」と呼び、塾生の指導を行う際も重視している。

では、どのような場面でこの能力を身に付けさせることができるだろうか。実は、家庭でできることはいくつもある。特に夏休みなどの長期休暇は貴重な機会となる。