資本主義の論理を教えた上で、その課題も伝える
「大人の常識」の多くは、「いかに利益をあげるか」「いかにもうけるか」という話になっていく。よって、ふだんから事あるごとにそうした身の回りの経済の仕組みを考えさせたり、気づかせたりしてほしい。
家族の夏休み旅行や週末の食事。夕ご飯に寿司チェーンの「くら寿司」へ行ったら、「どうして皿カウンターに皿5枚入れるたびに1回ゲームができるようになっているのかな?」と聞いてほしい。最初は「面白いから」「子どもが来るようにするため」という答えが出てくれば合格。その後、親子で会話をしていくなかで、一部機械化の導入によりコスト(人件費)を削減し、ゲームができるというサプライズ演出による集客効果で利益率を高める……といったような内容を子ども自身が考えられるようになればいい。
入試でしばしば問われる「高知県でなすの促成栽培がさかんな理由」「愛知県の渥美半島で夜間にも電気を照らして栽培する電照菊の生産がさかんな理由」も、その答えのなかには「促成栽培や夜間照明により出荷時期をずらし、利益を上げようとしていること」が含まれる。大人の視点がある子は記述問題であっても容易に類型化して答えが出せるようになっていく。
大人の常識を知っている子は中学受験に対応できる
まだ小さい子にそういうことばかり教えるのに抵抗を感じる人もいるだろう。それなら、その先も教えてあげればいい。
先ほどの芝中学校の入試問題、最後に次のような問題が出題されている。
≪現代の日本がかかえている問題に向き合ったとき、消費者の中にも、多少高くても身近なところで買うという選択肢が増えてもいいように思います。それはなぜですか≫
解答には「個人商店を存続させることで、自動車を運転することができない人や高齢者の日常の買い物の場を確保できる」という要素を入れたい。資本主義の論理だけではひずみも出るから、昔からある小さな個人商店も大切にしていきたいね、と話せばいい。それこそが、「大人の常識」につながる。
大学入試改革は2020年に始まると言われているが、その段階ではある程度記述問題が入ってくる程度。何だ入試改革と言ってもそんなものかと思ってしまいがちだが、それは大きな誤りだ。『合格する親子のすごい勉強』(かんき出版)にも書いたが、大学入試改革の本丸は2024年。コンピューターを利用して実施される「CBT方式」が導入されれば入試状況は一変する。2006年度以降に生まれた子どもたちは、新たな大学入試制度、コンピューターを利用する試験、面接重視など、企業の採用面接に近いような形式の受験が待っている。
これまでよりも早く、「大人の常識」を身に付けさせ、因果関係を説明できる子にすることが、子どもの将来につながっていくだろう。