5月の大型連休明けには、「新入社員の退職」が起きやすい。なぜなのか。社会保険労務士の鈴木麻耶さんは「4月中は我慢できていても、大型連休で吹っ切れてしまうようだ。最近のZ世代は指導に過敏に反応しやすい。先輩・上司の思わぬ一言が、新人を追い込んでしまうことがある」という――。
「なんとなく無理だと感じた」
「この度、勝手ながら一身上の都合により5月31日をもって退職したくここにお願い申し上げます」
私は社会保険労務士として、企業から労務相談を受けたり、社会保険の手続きをしたりしています。GW明け、毎年必ず新卒で入ったばかりの社員からのこの書面を目にします。退職届の「一身上の都合」の中身は、一部ご家族の都合等の明確な理由もあります。しかし、ヒアリングしてみると、この時期に特に多いのは、
「なんとなく無理だと感じた」
「仕事に行く気が起きない」
といった理由から遅刻や欠勤が続き、人事面談を組んだら退職届を用意していた例や、さらには退職代行サービスが入っていて面談すら組めないといった例です。
4月の新卒は研修だけで精一杯
「あとはこちらでやるね」
この言葉が発端で、最終的に退職に至ってしまった事例があります。
Kさんは食品小売会社に新卒で入社しました。第一志望だったこともあり、熱意も人一倍でした。どの会社でも同じように4月の最初の時期はビジネスマナー、個人情報の取り扱いなど多様な研修に加え、工場や営業所見学等「社会人になる自分」を飲み込むだけで精いっぱいの日々です。
毎朝出社すると、すれ違う人すべてにハキハキ挨拶して、朝礼と本日の業務指示を受けたと思ったら総務に諸申請のシステム登録で呼ばれあっという間に昼休憩、午後はまた研修といったスケジュールで、慣れない環境で息つく暇もありません。
そんな中A先輩から渡された業務が思うように進まず、言われた期限では半分も到達できていませんでした。状況を報告したところ、この言葉を言われてしまうのです。