※本稿は、心理コーチとよかわ『マウント取る人 消す魔法』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
人が相手を嫌いになる瞬間
なぜ人は相手を「嫌い」と感じるのでしょうね?
その答えは、自分がどのようなときに人を嫌いになるのかを冷静に観察してみるとわかります。とよかわが見ている限り、人が人を嫌いになるのは、「自分の予定からずれた行動をしてきたとき」です。
例えば、自分の作業に集中したいのにいつも無茶ぶりをしてくる上司。あるいは、自分を犠牲にしてまで家庭を優先しているのにちっとも協力してくれないパートナー。このような相手に対して、人は「嫌い」と感じやすいのです。
要は、自分の思惑を邪魔してきたと感じる相手であり、人は「自分の優先順位を脅かしてくる人」を嫌いになるのです。逆にいうと「自分の予定を優先してくれる人」、つまり「自分の優先順位を尊重してくれる人」に対して、好意を抱きやすいということです。
ちなみに、人間関係の「好き、嫌い」は固定的なものではありません。学生時代はいけすかない奴だと思っていたのに、社会人になって再会したら「なんや、ええ奴やんか」と思い直したことのある人、たぶんいますよね? このように、人間関係は流動的なものであり、タイミングや状況によって変わります。
「嫌い」の感情はコンディションによっても左右される
さらに、自分自身のコンディションによってもその程度は変化します。いうなれば、水墨画のグラデーションのように濃淡があるのです。漆黒といってよいくらいの「大・大・大嫌い」のケースもあれば、うっすらとしたグレーの「ちょっと嫌い」のケースもあるわけです。メーターでいうと、常に針がうろうろと動いて、定まらないイメージです。
このような、「好き、嫌い」の度合いを左右するのは、脳の「扁桃体」と呼ばれる部分です。ここは、脅威に直面したときの恐怖や怒りといった動物的で原始的な感情(「情動」といいます)をコントロールしており、「爬虫類脳」とも呼ばれています。平たくいうと、「生きる、死ぬ」にかかわる本能的な強い感情を司っているのです。
また、扁桃体には、オーディオ機器でいうところのアンプのようにボリュームを上げ下げする機能も存在します。よって、生命の危機の程度によっては、極端に激しい行動に自分を駆り立てることもあります。その人が「生命維持を脅かされている」と強く感じれば感じるほど、人の好き嫌いも極端にふれやすくなるわけです。
つまり、寝不足で体が疲れていたり、仕事が立て込んで脳がパンクしそうな状態だったりすると、人は他人に対して「嫌い」と感じやすくなります。
自分自身ではない「なにか」や「誰か」のために生きているときも同様です。「余裕がない=生命維持を脅かされている」と脳が認識すると、いろいろな人に腹が立ったり、嫌いになったりしやすくなります。

