新卒社員が最も言われたくないフレーズ

A先輩としてはお客様との納期もありますし、一定のフォローはできるようKさんへの期限も前倒しで設定していましたので大きな問題とは捉えていませんでした。

しかしその日以降、Kさんはまったく仕事に身が入らなくなりました。単純な作業であっても、「何を言われるんだろう」「本当はどう思っているんだろう」「どうせだめだ」といった不安で頭はいっぱいです。疑心暗鬼の中、疑問点について質問したところ、とうとうA先輩から、

「前に説明したよね」

という新卒社員が最も言われたくないワードが出てしまいます。

最終的にはこの言葉が決定打で、眠れない、食欲が落ちるといった健康面の不調が続き、遅刻、欠勤といった勤怠不良に陥ります。A先輩も幾度となく気にしてフォローに入りますが、そのまま五月病の誘発因子であるGWに突入します。

GW明けに人事面談を入れたところ、コトの顛末がわかり「仕事に行く気が起きず無理だと感じました」といって退職届が提出されました。この段階で人事がフォローに入っても後の祭りで、本人の退職への強い意志は揺るがず、体調不安もあり退職になってしまったのです。

日本の5月のゴールデンウイークの終わり
写真=iStock.com/Yusuke Ide
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Z世代は指導に過敏に反応しやすい

ここで注意をしなければいけないのは、一緒に仕事をしているのが新卒社員という点です。Z世代といわれる現在の新卒社員は、個性が重視され、価値観の多様化にもまれながら過ごした世代です。また経済的、社会的に不安定な時代に育ってきたため、自分が差し出した労働時間から得られるベネフィットや自身の心理的安全に敏感です。

個性が重視されたことで、相対的に称賛される機会は多く、注意される機会は少なくなりました。また、時代背景から、いつどうなってもいいように自身のキャリアや市場価値を高めたいという思考があります。つまり、自身の意見をオープンに発信でき、柔軟な思考がある反面、指導に過敏に反応しやすく、自身のワークライフバランスを大切にする傾向が強いと言い換えることもできます。