主人公は「男女平等の世を目指す弁護士」
朝ドラ「虎に翼」が好評を博している。
ぼんやり&清貧ヒロインではないし、同情を誘う不遇な子供時代でもない。男尊女卑が当たり前の昭和初期、「女の幸せは結婚にある」と信じて疑わない親や社会に対して、疑問と違和感を覚えたヒロインがある志を抱くところから始まる。法律を学び、男女平等の世を目指す弁護士になりたい、と。法律は弱い者を守る盾、冷たい雨をしのぐ傘、震える体を包み込む温かい毛布になりうると信じて。
そんなヒロイン・猪爪寅子を演じるのは伊藤沙莉。放送が始まって1カ月もたっていないが、彼女の役者人生の集大成といってもいいほどのハマリ役で、来し方を思い出さずにはいられない。
彼女の書き下ろしエッセイ『【さり】ではなく【さいり】です。』(KADOKAWA)も参考にしつつ、魅力と説得力を探っていきたい。
大所帯の中でも光る才能
初めて顔と名前を意識したのはAKIRA版「GTO」(2014年・フジ系)の生徒役だった。作品自体は魅力の少ないものだったが、沙莉と松岡茉優だけは目を惹いた。「大所帯の中になんだか見たことがある手練れがおる」と思った。それもそのはず、沙莉は「女王の教室」(2005年・日テレ)や「わたしたちの教科書」(2007年・フジ)にも生徒役で出演していたのだ。
特徴のあるハスキーボイス、メインキャラクターではないのに、なんだか目で追ってしまう存在感のある子役だった。いじめる役も多かったし、キャラクター性の強い独特の立ち居振る舞いで、平成に定着したギャル文化の担い手としても暗躍。
ヒロインの横でなんだかんだとにぎやかすタイプやヤンキー系女子もきっちりこなし、コメディ路線を着実に歩んでいるように見えた。大勢が映る画面の中では常に沙莉を目で追うようになったし、強烈なキャラクターに説得力をもたせる顔芸があまりに自然体で噴き出して笑ってしまうこともしばしば。