なぜ自転車は左側通行で走らなければならないのか。自転車評論家でジャーナリストの疋田智さんは「交差点において、右側通行する自転車はクルマにとってもっとも視認しにくく、距離が近い。中でも、歩道を右側通行する自転車は最高に危険だ」という――。
右側通行は自転車の最もメジャーな事故原因
今年4月、ドライブレコーダーに映るママチャリ主婦が炎上したことがあった。交差点を右折したママチャリがクルマの正面にやってきて、ドライバーを恫喝し、車線に居座ったというやつだ。その姿は「迷惑自転車の典型」とされ、ネットでプライバシーまでさらされるというヒドいことになった。
私はこの人の住所や夫の勤務地など、ネットでさらし者にするのは最低だと思う。正義を笠に着て私憤を満足させる。そんなのはただの私刑(リンチ)だろう。しかも、今回の事象には「通学路」「時間帯」の事情まであったという。
それは前提として、この主婦がここまで叩かれた理由のひとつには、「逆走」があると考えざるを得ない。逆走すなわち右側通行の自転車は、ものすごく迷惑で危険だからだ。
それはイメージとしての「正面衝突になって危ない」というだけじゃない。それはむしろ小さな理由で、右側通行は自転車の最もメジャーな事故の主な原因なのである。
左側通行であればクルマから見えやすい
まずは、交差点に近づく自転車➀~⑤を描いた画像2を見ていただきたい。出会い頭の事故の典型は、こうした交差点で起きる。交差点にさしかかったクルマにとって(クルマはもちろん左側を通る)左側通行をする自転車は、①も②も③も④も視認が可能だ。
④などはクルマとの距離が近くて、一見、危険に思えるかもしれないが、自転車より絶対速度の速いクルマは、この交差点に至るまで、ずっとこの④の自転車を認識してきたわけで、ドライバーにとって、少なくともそこに自転車がいることは分かっていることになる。
これら①、②、③、④の左側通行をしている自転車は、ドライバーが「邪魔だな」と思おうが「危なっかしいな」と思おうが、そこに自転車がいることを認識していることだけは間違いない。見えるからだ。