夏休みは海外旅行や実家への帰省など遠方を訪れることが増える。難関校合格者を多く輩出する塾経営者の筆者は、移動時の子どもの座席位置を親がしっかり考えるとより学びの多い旅になると語る。「東海道新幹線の座席ならE、ハワイに行く飛行機の座席ならAです」。なぜ、そう断言できるのか?

慶應義塾普通部の試験「富士山はどの席がよく見えるか?」

2015年の慶應義塾普通部の入学試験「社会」にこんな問題が出た。

東海道新幹線の座席の図(東京から新大阪方面を向いて、左からA、B、C、通路をまたぎ、D、E)を受験生に見せ、「ア~ウの車窓の風景は、それぞれAかEのどちらの側からよく見えるか?」と問うものだった(車窓アは伊吹山、イは富士山、ウは伊豆半島)。

私は以前から、帰省や旅行などで東海道新幹線に子どもを乗せる場合、「窓側座席」を親がしっかり予約すべし(東海道新幹線なら座席「E」がベスト)、ということを持論にしている。それは、新幹線だけではなく、飛行機に関しても言える(ハワイ行きなら座席「A」がベスト)。新幹線について解説する前に、まずは飛行機について説明しよう。

▼夏休み旅行 飛行機は窓際の座席に子どもを座らせる

国内線・国際線に限らず、飛行機に乗るときには、「できるだけ窓側に子どもを座らせたほうがいい」。今の時期、旅行の相談があれば私は塾生の保護者にそう伝えている。

たとえば、大人2人子ども1人で中型・大型の飛行機に乗ると、どうしても3席横並びの「C、D、E」といった座席を予約したくなるものだが、子どもは窓際に座らせてほしい、と。

なぜか。

羽田空港を利用する場合、離陸直後には京浜工業地帯の工場群が見えることがある。子どもは学校や塾で、京浜工業地帯を勉強する。「工場が密集しているかつては日本最大の工業地帯」とか、「土地が足らなくなって関東内陸工業地域に工場を移転した」とか。たしかに習う。でも彼らは京浜工業地帯をイメージしづらい。

社会科で勉強する「農業」や「水産業」は得意なのに、「工業」を苦手にする子が多いのは、食べ物と違って、ものづくりは実感を持ちにくいからだろう。でも、埋め立て地に延々と続く工場群を一度上空から目にしたら、感覚として理解することにつながる。

着陸直前もそうだ。千葉県の房総半島を通って着陸していくが、その途中に京葉工業地域の工場群を見ることができる。