正月スポーツの代名詞とも言える箱根駅伝。今年のレースでは青山学院大学(以下、青学)が圧倒的な強さで優勝し、見事3連覇を達成しました。そんな青学を率いる原晋監督の指導方法は、体育会系部活動に残る旧態依然とした練習内容とは一線を画しています。
原監督は10年間ほどサラリーマンの経験があり、「伝説の営業マン」と呼ばれるほどの成功をおさめた人物。その経験を駅伝に活かしており、「ビジネスも駅伝も同じ」と言い切ります。現代の若者を掌握する指導方法は、ビジネスマンにとっても参考になるはず。今回は、原監督の指導方法の裏側をのぞいてみました。
「サンキュー大作戦」で優勝した今年度
2017年の箱根駅伝に「サンキュー大作戦」というキャッチコピーで挑戦した青学。これまで支えてくれた多くの方々に感謝の思いを込めて走るといったものです。こういったテーマは今年だけでなく、2016年には「ハッピー大作戦」、2015年には「ワクワク大作戦」というキャッチコピーを掲げて箱根を走っています。チームがひとつになりやすいキャッチコピーを毎年考案してレースに臨んでいるわけです。同大学の選手は掲げたコピーそのままに、楽しそうに走っている姿を披露し、見る者の心に爽やかな印象を残します。
原監督は、なぜ、このような指導方針をとっているのでしょうか。
まずは、原監督の経歴をふり返りましょう。自身も陸上競技に取り組んでいた原監督。中学生から陸上を始め、中京大3年生時に全日本インカレ5000mで3位に入賞。卒業後は中国電力に“陸上部第一期生”として入社し、将来が期待されていた選手でした。しかし、不運にもケガに見舞われ、社会人5年目に競技から引退するのです。
陸上選手としての道が途絶えたら、次に考えるのが指導者の道。慣れ親しんだ環境で仕事を見つけるのが、多くのスポーツ選手のセカンドキャリアとなりますが、原監督はそれを選びませんでした。
中国電力の提案型営業マンとして再スタートをきった原監督。同期が本社で活躍するなか、配属されたのは支店の下にある山口県徳山市(現・周南市)の営業所。この職場で、蓄熱式空調システム「エコアイス」を社内でいちばん売り上げました。社内でも目立つ存在になり、「伝説の営業マン」と呼ばれるように。
中国電力で10年ほどサラリーマン生活を送った後、とくにコーチングなどの指導メソッドを学ぶこともなく青学の監督に就任した原氏。いま、青学で展開している「組織構築術」「人材育成術」は、営業マン時代に培ったものが土台なのです。これらを武器に、箱根駅伝から遠ざかっていた同大学を大きく飛躍させました。