“平常心”の横綱レースだった青学大
“稽古は本場所のごとく、本場所は稽古のごとく”。
第35代横綱、双葉山定次の言葉である。使い古された言葉かもしれないが、彼らには相応しい言葉ではなかったか。
93回目を迎えた箱根駅伝、青学大10区の安藤悠哉(4年)が日本橋を左折、フレッシュグリーンの襷が大手町に帰ってくる。安藤は初優勝のゴールテープを切った前々回と同様、両手を広げて3連覇のゴールに飛び込んだ。
初日の往路を終えて後続との差は33秒。拮抗した展開に沿道は沸き立つが、原晋監督は動じない。7区終盤における失速をものともせず、終わってみれば2位東洋大と約7分差の圧勝劇。戦前にライバルと目されたチームが実力を発揮しきれない中、選手層で優位に立つ青学大は致命的なミスも無く堂々たるレースを展開した。
総合タイムで見れば、直近3大会と比較して最も遅く、決してハイレベルなレース展開では無かった。にもかかわらず、なぜここまで差がついたのだろうか。垣間見えるのは、肝のすわった青学大の“リカバリー力”と、寄せきれないライバルたちの“歯がゆさ”だった。
大学三大駅伝と呼ばれる出雲駅伝、全日本大学駅伝における成績および、各選手の実力から、青学大のライバルと目されていたのは、東洋大、早大、駒大、東海大、山梨学大の5チーム。結果としてそれぞれ2位、3位、9位、10位。山梨学大に至っては体調不良の選手が続出したためベストメンバーを組む事が出来ず、1区で脱落。総合17位でシード権を失う憂き目にあった。
一時は手の届く位置まで肉薄しながらも、青学大の背中はすりぬけるように遠のいた。その裏にあるシンプルだがしたたかな区間配置。ポイントは2区、4区、6区である。